離婚を前提にお付き合いしてください ~私を溺愛するハイスぺ夫は偽りの愛妻家でした~
 二人暮らしにしては少し広いリビング。そこに置かれているのは木製の四人掛けテーブルだ。

 千博と選んだそれは天板の角と脚が丸みを帯びたデザインで、とてもやわらかくて温かな印象を与えてくれる。それはまるで千博の纏う空気のようで、美鈴はこのテーブルに触れていると不思議と落ち着いた気持ちになる。

 そんなお気に入りのテーブルに向かい合って座り、食事を楽しむ。

 千博は「今日もおいしい」と言って、にこにこと微笑んでいる。料理を口にしながらも、あまりにも嬉しそうにこちらを見つめてくるものだから、美鈴はどうしたのかと小首を傾げる。

「うん? 何? なんだか嬉しそうだけど」
「はははっ。そんなに顔に出てたかな。美鈴と向かい合ってご飯が食べられるのはやっぱりいいなって実感してただけだよ。美鈴の料理はいつもおいしいけど、一緒に食べるとよりおいしくなるから」

 さらっと嬉しいことを言ってくれる。美鈴だって一人で食べるよりも千博と一緒の方が断然いい。お腹だけでなく、心まで満たされるのだから。

「ふふっ、そうね。私もそう思う。一人だとなんだか味気ないから」
「本当にね。それにこうやって一緒に過ごしていると、美鈴と結婚した実感が湧いてとても嬉しくなる。大好きな人が僕の妻になってくれたんだなって」

 これだからこの人のそばにいると幸せになってたまらない。真っ直ぐな言葉はいつも美鈴の心を温めてくれる。

 そうすれば美鈴の口からも自然と素直な言葉がこぼれ出る。

「私も嬉しい。千博さんとゆっくり過ごす時間がすごく好きなの。幸せだなっていつも感じてる」
「僕もだよ。こういう生活がずっと続けばいいんだけどね」

 言葉尻からそれが続かないことが窺える。

 そして、彼の少し浮かない表情と次の言葉がその予想を裏付ける。
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