離婚を前提にお付き合いしてください ~私を溺愛するハイスぺ夫は偽りの愛妻家でした~
「しばらくしたら、また忙しくなりそうなんだ。夕飯は家で食べるつもりだけど、美鈴は先に食べていていいからね」
「そう……わかった」

 美鈴は一瞬だけ寂しい表情を浮かべたものの、千博に余計な気を遣わせないよう、すぐに笑顔を浮かべ直す。続く話題も意識的に明るいものにした。

「私はもっと料理の勉強をしておこうかな。千博さんが疲れて帰ってきても、英気を養えるように。私もおいしいもの食べたいしね」

 結婚前もある程度自炊はしていたものの、それは必要に駆られてやる程度だった。本格的に料理を始めたのは千博と住み始めてからだ。今は時折母に指導を仰ぎながら、少しずつレパートリーを増やしている。

 千博は「美鈴は本当に頼りになるな」と笑顔を見せてくれるが、すぐに申し訳なさそうな表情に変わる。

 美鈴の些細な変化にも気づいてくれる千博だから、やはり寂しい気持ちは伝わってしまったのだろう。
< 6 / 216 >

この作品をシェア

pagetop