離婚を前提にお付き合いしてください ~私を溺愛するハイスぺ夫は偽りの愛妻家でした~
「あー、それならスーパーかどこかでお弁当買ってこようかな。今からお店探すのも疲れると思うし」

 ろくな会話もない状態での外食はさすがにきついだろう。周囲の客にだって変な空気を与えてしまうかもしれない。この家で二人きりの食事も気まずいことに変わりはないがまだ幾分マシだ。

 結局、自分が作るとは言えなかったが今日はもうしかたない。外に出るくらいならこの案に乗ってくれと願っていれば、千博はあっさり了承する。

「わかった。美鈴はそのまま出られるよな?」
「え、うん?」
「じゃあ、行こう」

 自分一人で買い物に行くつもりが、なぜか千博も一緒に行こうとしている。昔の千博ならいざ知らず、今の千博がそれをする意図がわからない。

 偽るのはもうやめているはずだが、これも彼の素なのだろうか。

 結局、千博の考えはわからないまま、美鈴は久しぶりに千博と二人で出かけた。

 もちろん以前のように手を繋いで仲よくなどということはない。でも、だからといって冷たいということもなかった。

 買い物中はかごを持ってくれたし、美鈴が何を買うか考えている間、急かしたり面倒くさそうにしたりすることもなかった。歩調は美鈴に合わせてくれたし、エレベーターでほかの男性が乗ってきたときにはさりげなく美鈴の前に立ってくれた。

 冷たいどころか優しかった。まるであの頃のように。美鈴は今さらながら千博との幸せな時間を思い出し、少しの切なさを覚えていた。
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