離婚を前提にお付き合いしてください ~私を溺愛するハイスぺ夫は偽りの愛妻家でした~
「そうか。中学生の方は?」

 その問いに美鈴はここ半月のことを思い返す。美鈴が中学生のコマも持つようになったのは今から半月ほど前。急遽欠員が出たとのことで代打を頼まれたのだ。

 担当させてもらっているのは一コマ目だが、中学生ともなると授業時間は遅い。今日、美鈴の帰宅が千博よりも後だったのはそういう事情からきている。

 美鈴はこの半月の中学生への指導の様子を振り返りながら、千博の問いに答える。

「教える内容が違うし、まだ要領を得てないところもあるけど、すごく教えがいがある。英語が得意な子も苦手な子もいて、塾に通う目的もそれぞれだけど、みんな一所懸命に勉強してるの。だから、少しでも英語を楽しく身につけられるよう、しっかりサポートできたらなって思ってる」

 生徒へ教えることへのやりがいを感じながらそう答えれば、なぜか千博の表情がふっとやわらいだ。大好きだった千博の姿を思い出して、思わず胸が高鳴る。

 しかし、改めて千博の顔をよく見てみても、今の表情は真顔に近くて、そこにやわらかさはない。きっと今のは美鈴の願望が見せた幻影だったのだろう。そう思い直した。
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