離婚を前提にお付き合いしてください ~私を溺愛するハイスぺ夫は偽りの愛妻家でした~
 いかにも磯崎らしい対応に微笑むも、心配をかけているこの状況が申し訳なくて、わずかに眉尻を下げる。

「職場でこんな姿を晒すなんてだめですね」

 ぽつりとつぶやいた美鈴に、磯崎は優しく微笑む。

「授業中なら問題だと思いますが、休憩中くらいは大丈夫ですよ。考えても、考えてもなかなか答えの出ないことってありますからね」

 美鈴の状態を的確に言い表してくる磯崎に、美鈴は自然と自分のことを語り出す。

「本来そんなに悩む質ではないんですけどね。いろいろあったからか、少し慎重になっているみたいで……自分の気持ちのあり方というか、振る舞い方というか、今抱えている問題にどう向き合うべきかがわからないんです。私一人のことじゃなくて、相手のあることだから余計に」

 オブラートに包みながらも自分の心境を語る。相手がいるというところまで言ってしまうのは少し話しすぎかとも思ったが、磯崎にならば言っても大丈夫だろう。

 彼は美鈴の話を真剣に聞いて、何やら考え込んでいる。

 詳しいところを話せないせいで随分はっきりとしない言い方をしてしまったから、下手に考え込ませてしまったかもしれない。

「すみません。曖昧でよくわからないですよね」
「いえ。その問題が何かはともかく、自分の行動について悩むのはよくわかりますよ。大人はいろんなしがらみがありますから、単純にはいかないですよね」
「おっしゃる通りですね」

 離婚という大きな転換点をこの先に控えている状態で、千博とのことに真っ直ぐに向き合っていくのはなかなかに難しい。自分の心の中だけを考えればいい問題でもないから、簡単には答えを導き出せないのだ。
< 88 / 216 >

この作品をシェア

pagetop