離婚を前提にお付き合いしてください ~私を溺愛するハイスぺ夫は偽りの愛妻家でした~
 土曜日の昼食時。食卓で向かい合う二人の間に会話はない。

 ここ最近の千博は仕事が少し落ち着いているようで、共に家で過ごす時間が増えたものの、だからといって二人の間の空気は変わらなかった。

 いくら美鈴が一人で悩んでいても状況が進展することはない。美鈴自身が動かないかぎり、何も変わらない。

 でも、今日はきっと変わる。磯崎の言葉を受けて、一人で思い悩むのはやめると決めた。

 だから、ただただ自分がしたいと思うことに忠実になる。

「千博さん。少しだけ質問をしてもいい?」

 意を決して発した問いに千博は訝しげな顔をする。わざわざ質問することを問いかけるなど、どんな質問をされるかわからないとでも思ったのかもしれない。

 それでも千博は拒絶まではしない。

「……いいけど」

 変なことを訊くわけではないが、これが本当に千博と向き合うための最初の一歩かと思うと少しの緊張を覚える。

 それでもその緊張は飲み込んで、小さく口を開く。
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