離婚を前提にお付き合いしてください ~私を溺愛するハイスぺ夫は偽りの愛妻家でした~
「千博さんは……千博さんは、何が好き? 千博さんの好きなものを教えて?」

 自分で口にしておいてなんだが、随分と幼稚な質問に苦笑しそうになる。いい大人が配偶者相手にするような質問ではない。それでも、これを最初の一歩にすると決めていた。

 話題にしやすくて、相手が嫌な気持ちにならなくて、自分も知りたいと思うこと。きっとこの質問以上に適したものはない。

 けれど、あまりに唐突な質問だったからか、千博は眉間の皺を随分と深くしている。

「……は? 好きなもの? なぜ突然そんなことを訊くんだ」

 至極もっともな疑問だ。千博からすれば理解しがたいだろう。でも、その答えは単純明快。

「本当の千博さんが知りたいから」

 ただそれだけ。その理由一つに尽きる。

 美鈴のしたいことは結局のところ、離婚前提の交際を提案したときに思ったことと同じだった。本当の千博を知って、自分の気持ちと向き合いたい。最初から美鈴の望みは変わっていなかったのだ。
< 91 / 216 >

この作品をシェア

pagetop