離婚を前提にお付き合いしてください ~私を溺愛するハイスぺ夫は偽りの愛妻家でした~
 庭園を一周ぐるりと見てまわった二人は、趣のある洋館の前へとやってきた。

 レンガ造りの二階建ての建物で、一階にも二階にもたくさんの窓がついている。その様相はどこかヨーロッパの建物を彷彿とさせ、異国に来たかのような気分にさせられる。

 庭園とはまた違うその魅力に、美鈴は思わず引き込まれる。

 千博に中も見学できるからと促され、洋館の内部へと足を踏み入れれば、そこには外観以上に異国情緒漂う空間が存在していた。

 重厚な扉に、繊細な彫刻の施された暖炉、そして、天井には煌びやかなシャンデリア。まるでどこかのおとぎ話にでも紛れ込んだかのような空間に、美鈴は感嘆の息を漏らす。

 今住んでいる部屋がいくつも入ってしまいそうなほど館内は広く、用途に応じて作られた部屋がいくつもある。

 そんな部屋の一つ一つを静かに見てまわっていた美鈴だが、とある部屋を訪れたところで思わず声が漏れた。

「和室?」

 洋室の部屋ばかりが続く中、突如として現れた畳張りの部屋。襖や障子まであって、完全なる和室が存在している。まさか洋館内に畳の部屋が存在しているとは思わず、美鈴はしげしげと眺める。

「この時代の建物にはよくある様式だよ」

 千博の言葉で大正時代を想像する。言われてみれば、確かに和と洋を兼ね備えた文化があったような気がする。

「確かに和洋折衷のイメージがあるかも。いわゆる大正ロマン?」
「うん。そう言われることもある」

 美鈴はこれが大正ロマンかともう一度じっくりと和室を眺める。

 和と洋が組み合わさった建物に不思議な感覚を覚えるが、よく考えてみれば洋館と日本庭園の組み合わせも同じだと気づく。庭園も含めた全体があの時代を象徴する造りになっているということなのだろう。

 確かにこれは歴史的建造物と言われるものなのだと、この瞬間に初めて思った。
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