離婚を前提にお付き合いしてください ~私を溺愛するハイスぺ夫は偽りの愛妻家でした~
 洋館内を一通り見学し終え、外に出た美鈴と千博。あとはもう帰るだけだからと出口へ向かう中、美鈴は素直な感想をこぼした。

「私ね、実は歴史的建造物って聞いて、すっかりお寺や神社だと思い込んでたの。社会の教科書に載っているような建物なのかなって。でも、こういうところも文化財になってるんだね」

 寺や神社が嫌というわけではないが、歴史的建造物に指定されるようなところだとどうしても堅苦しいイメージがある。けれど、今日訪れたこの場所は当時の人々の暮らしが自然と想像されて、不思議な感動を美鈴に与えてくれた。それこそロマンを感じられる空間にとても胸がときめいたのだ。

 その気持ちを乗せて伝えれば、千博はわかっていると言わんばかりに頷いている。

「歴史的に価値のあるものだからね。もちろん文化財に指定されている寺や神社もある。でも、美鈴はそういうところよりもこっちの方が好きだと思ったから」
「え……?」

 思わず千博を見やる。まさか彼は美鈴のことを考えてこの場所を選んでくれたのだろうか。

「私が好きそうなところを探してくれたってこと?」
「いや、まあ……僕はこだわりないから、君に合わせるのがいいと思って」

 美鈴は微かに目を見開く。

 一緒に出かけてくれただけでも十分だと思っていたのに、美鈴に合わせて選んでくれていたなどと知れば、喜びが溢れ出る。

「そうだったんだ。確かにこういうところの方が好きかな。考えて選んでくれて嬉しい。ありがとう、千博さん」
「いや、うん……」

 嬉しくて表情の緩んでいる美鈴と、どこか照れくさそうに困り顔をする千博。二人の間にはこぶし三つ分くらいの隙間があって、いったい傍から見た二人はどういう関係に見えるのだろうとふと思う。

 そんなことを思えば、これから他人になりゆくことが頭の隅をよぎってしまって、美鈴はそれを追いやるように千博に話しかけた。
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