はるけき きみに  ー 彼方より -
「お嬢さま」
 側にいた八重だった。

「なんということでしょう、これはいったい」
 歯の根も合わぬほど震えている。

「これはなにかの間違いよ。お役所へ行ってみましょう。お父様と懇意にしている役人もいるはずよ、彼らにどうなっているのか聞いてみましょう」


 翌朝を待って共に役所へ向かう。
 だが入口で門前払いされた。

「あなた方を中へ入れる訳にはいかんのだ」
「とにかく父に、篠沢丹波に会わせてください」
「そうです、私たちはまったく寝耳に水なのです」

 必死に懇願する、しかし、
「何人たりとも会わせることはならんとのお達しだ。速やかに帰られよ」

 取り付く島もなかった。
 蒼白なまま帰ろうとする。
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