はるけき きみに  ー 彼方より -
「最初に父に異変が起きたのは、一年前のあの日だったわ。いつも通り役所に仕事に出たんだけど、夕方になってその役所から使いが来たのよ」

 なんだろうと迎えると、書状を突き出された。

 そこには、
【篠沢丹波、右の者尋問すべきことあり。ついては暫時役所に留め置く仕儀と相成り候】

 えっと息をのむ。
 すぐに意味が分からない。

 何度も読み返すうち、篠沢丹波自身が罪に問われているのだと知った。

「ち、父がいったいどうしたというのでしょう。こんなふうに扱われるなんて」

「見ての通りだ。篠沢丹波に嫌疑がかかっておるのだ」

「け、けんぎって、なんの嫌疑ですか。父は長年役人として勤めてきたのです。時には罪人を吟味する立場にはあれ、自分が問われるなど有り得ないと」

「仔細はこれから明らかになっていく。今は口外できないとのお達しだ。そのほうら家族は身辺を明らかにして沙汰を待つことだな」

「そんな!」

「では確かに伝えたからな、これ以上の問答は無用だ」
 と言うと身をひるがえす。
 そして後も見ずに去った。
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