はるけき きみに  ー 彼方より -
京での出来事
 サジットがじっと手の中を見ていた。

 そこに金が入った袋がある。
 フライロート号で堺商人との通訳をした報酬だった。

「帰りたいんじゃないか」
 マシューが声をかける。

「・・え?」  
「故郷へだよ。南洋の島で家族が待っているんだろう」

「まあそうだな。うちは金がないし、幼い兄弟が大勢いるからね。日本へ来るときは通訳の手付金を家に置いて来たんだ。それも底をついているだろうと思って」
「じゃ帰ったらいいだろう、フライロート号はもうすぐ出航するらしいぞ」

「あの船には乗りたくないんだが」
 と言ってまた手の金を見る。
「あの船で日本を出て、最初に寄る港でほかの船に乗り換える手もあるんだ。そしたらクレイブ船長と顔を合わせるのは数日で済むだろう?」

 そうだねとうなずく。そして、
「君は、どうするんだい」

 そんな話を紫音が聞いていた。
 着物をたたんでいた手が止まる。

「いっしょに行こう、と言いたいところだが俺はここに残るよ、もう少しだけでもね」
「それは、あの紫音さんのことが気になるからか」

「そうだな、まあ、そうかもしれないな」
 くすぐったそうに笑っている。











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