はるけき きみに  ー 彼方より -
追跡
 ほどなくして、若い娘が疾走する事件が起きた。
 娘は案山子祭りの地区会長の孫だった。

 買い物に行くと言って家を出た。だがその夜はおろか翌日も翌々日も帰ってこない。
 思い当る限りを探したがどこにもいなかった。

「孫の美也は魚屋へ行くと家を出たのです。それがもう二日も帰ってこないのです」
 地区会長は思い余って役所に訴えた。

「あの子の親、私の息子夫婦は相次いで病死して私が育てたのです。後生でございます、どうか探し出してくださいませ」

 係官はぞんざいに、
「ひとつ尋ねるが、その美也という娘には恋人がいたのではないか?」
「え? あ・・、いや、その」

「やはりな。さしずめその男と駆け落ちしたのであろう。知らぬは親・・いや祖父ばかり。今頃はその男と楽しくやっているのだと思うぞ」
「いえ、それは・・」

「ほとぼりが冷めたらあっけらかんと帰って来る。それよりこんな些細なことで役所を煩わせるな。こっちは御用繁多だからな」

 面倒そうに追い払う。
 会長は術もなく出口に向かった。
 だが、
「お役人様、助けてください、うちの娘がいなくなったんだ」

 走り込んでくる者がいた。
 男は一人ではなかった。
「私の娘もいなくなったんです、急に姿を消して」

「なんだ申し合わせたように、そんなに続いて娘がいなくなる訳は・・」
 と言ってぎょっとした。

 また数人が駆け込んできたからだ。
 彼らは異口同音に娘がいなくなったと告げた。

















  




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