はるけき きみに  ー 彼方より -
白髪の舟頭
 辺りが薄暗くなっていく。  
 こっちが身を隠すには好都合だ。だが向こうの舟も見失いそうになる。
 紫音は舳先に身を乗り出して目を凝らした。

 あの舟に何人の娘が乗せられているのだろう。
 港に向かっている、するとそこで密貿易船に乗り換えさせるのか。
 船は役所が捜索中だと聞いている。
 だからいったん周辺のどこかへ監禁して、隙を見て乗船させるのではないか。

 舟に乗っているはずの多鶴が浮かんだ。
 彼女を案じて奔走している石川や田中の姿をもだ。

 なんとか多鶴さんが無事でいてくれますように
 舟べりにしがみついて祈った。



  








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