はるけき きみに  ー 彼方より -
「どうぞ、遠慮なくお入り下さいませ」
 大きな屋敷の前でそう言われた。

 さきほどマシューとサジットは役所を出た。
 今日の取り調べは終了したのだという。
 
「ここは鹿島様のご自宅なのですよ」
 案内しているのは商人風の男だ。

「かしま、さま?」
「はい。役所の長でご身分のある方なのです。今後のこともあってお二人にはこの屋敷に来ていただきたいのだと」

「今後のこととは?」
「はあ、いろいろとあって」
 と言いさしたが、
「あなた方が探しているオランダ船、その船を調べるにも時間が必要でしょう。だからしばらくここに滞在したらいかがかとおっしゃっています」

 マシューはサジットを見た。
 この堺は見ず知らずの街だ、ここで拒否しても仕方がない。
 観念したように門をくぐった。

 広い敷地には庭があり、大小の建物が並んでいる。

「私は近江屋と申します。堺でいろいろ商売をさせていただいております」
 案内しながら男が名乗った。

「この先の座敷でおもてなしするよう言いつかっております。どうぞ奥へお進みくださいませ」
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