はるけき きみに  ー 彼方より -
 小道のように造られた石畳に招こうとする。

 辺りにはさまざまな庭木があり、いくつもの石があった。それを効果的に配置して。まるで自然の風景を凝縮したかのようだ。

 ふと思い出すものがあった。
 昔、あの老牧師に聞いたこの国の庭の話だ。
 
「日本庭園という素晴らしいものがあるのです。それは一服の絵のようで心をうばわれるのです」
 と。

 これがそうか、と眺めてみる。

 身近で水の音がした。
 庭を流れる遣り水だった。

 石垣の間を通り、岸辺の羊歯を揺らしていた。

 サラサラという音色に耳を澄ましてみる。
 
 それは何かを呼び掛けてくる声のようでもあった。
 なにげなく頭をめぐらした。
 
 そして・・。
 えっと思った。

 池の向こうを歩いている人の影が見えた。

 そんなマシューに気がついて向こうもこっちを見た。
 そして驚いた顔になる。

 その人は、この堺に来て役所へ行く途中で別れた、あの紫音だった。








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