はるけき きみに  ー 彼方より -
 船長は唇を噛んでいたが、
「申し訳ない。あの状況では海に投げ出される危険が大きいと思ったのだ。だから」
「だから?」
「熟練した水夫を、失うことはできないと」
 絞り出すように言う。

「それで我々なら犠牲になってもいいと思ったのか」
「いや、それはそのぉ・・」
 答えに窮した。

「だが今さらそれを言っても仕方がない、それはわかっている。だとすれば」
「だとすれば?」
「それなりの報酬をもらうべきだろうな。慰謝料ともいう。相当な額になると覚悟してもらいたい」

 船長が反論しようとした。
 しかし頭を抱え込む。マシューらには頼むことがあるからだ。

「わかったよ。望みの物を言ってくれ。善処しようじゃないか」

 そして次にはやはり、
「その代わり、と言ってはなんだが通訳を依頼したいのだ。言葉の問題で我われは困り切っているのだからね」

 二人がニヤリと笑った。
< 75 / 107 >

この作品をシェア

pagetop