はるけき きみに  ー 彼方より -
 今、マシューはじっとこっちを見ている。

 そして、
「なんだか、その場が目に浮かぶような気がするな」
「え?」

「役所から来た男性だよ。彼らは黙って紫音を見ていたんだろう」
「そ、そうだけど?」

 それが何か? と問う紫音に、マシューはふっと笑った。

「いや、どう言えばいいのかな」
 言葉を探すように窓を見た。

 庭の木々が風に揺れていた。
 どこかの風鈴がチリンと鳴った。

「人と人のやり取りは、面白いと思うんだ」
「・・え?」

「そこに感情があってそれを声にして会話をしているだろう。相手が外国人だと言葉が伝わりにくいよね。そうかと思えば外国語どうしでも意外に同じような表現がある。全く違うようでいて、どこかつながっているところがあると思うんだ。」

 漠然としたことを話し出したと思った。

「人は長い間そんな言葉を使って生きてきただろう。だからその接触の中で、なにかが生まれているのかもしれないね。ほんのわずかな偶然で出会ったり出会えなかったり。出会っても、ただ一瞬近くにいただけの関係だったり、そうではなかったり。そんな人と人の交わりは面白いと思うんだ」

 それでいて何か響いてくるものがあった。
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