はるけき きみに  ー 彼方より -
「そうね、本当にそうだと思う。でも・・」
 と声をつまらせた。
「私はその外国語がしゃべれないでしょう。だから会話そのものができないのよ、悲しいことだけど」
 いつも念頭にそれがある、だからそこに行きついてしまう。
 
 ときどきマシューとサジットは英語で話していた。
 ひどく難解な会話に聞こえた。

 そしてあのときの近江屋の言葉が思い出された。
『あの侍は、英語で苦労しているのです、劣等生なのです』
 と。

 マシューが破願した。
「だいじょうぶだ。紫音ならすぐ話せるようになるさ、あっという間にね」

「それはむり、無理なのよ。こういうことを日本語で何というか教えてあげましょうか、安請け合いというのよ」
 思わす力が入った。
 自分も話したいという気持ちが強いからだ。
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