はるけき きみに  ー 彼方より -
 彼はマシューとサジットに、
「これらはすべて貴重な物だ。どれほど価値があるのかしっかり説明してくれよ。日本で役に立つ品ばかりだ、苦労してここまで運んできたのだとな」

 価格の交渉になった。
 明らかに水増しされたそれを商人が値切り始める。
 しばらく腹の探り合いが続いた。

 最後に折れたのは商人だった。
 堺に来る貿易船が激減し、西洋の品が手に入らなくなっているからだ。

 一人の商人が高値で買い始めた、すると他の商人が追随した。
 たちまち奪い合うような騒ぎになる。

 さばけていく商品を見てクレイプがにんまり笑った。

 だがマシューは知っていた。
 時計や羅針盤はオランダの蚤市で買った二束三文品だ。
 薬は途中で立ち寄った南方の薬売りから仕入れたものも混じっている。その効き目はどれほどのものか。

 結局その日に出された物品のほとんどが買い取られた。

 帰り際に商人が言った。
「明日からは別のものも見せてくださいよ」

「別のもの?」
「そうです、鉄砲です。我われの一番の目的はそれですからね」

 クレイプが笑いを浮かべた。
 イエスともノーともとれる笑みだった。


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