きみと私の恋のみち〜想いを伝えたい〜
8.月音くんとの距離
あの日は帰ってから、じっくり考えなおしてちゃんと月音くんとはいちゃいちゃせずにちゃんとした関係を築きたいと思った。
そして今日学校に来たわけだが、私はあくびを噛み殺しながら授業を受けていた。昨日、橘さんを傷つけてしまったんじゃないかとかれこれ一時間程度悩んでしまって寝不足気味だった。
四時間目が終わり、昼休みということでお弁当を取り出す・・・・なのに、できない‼お弁当がない‼
今朝、お母さんが作ってくれたお弁当がキッチンに置かれてて、トイレに行こうとしてそのままにしちゃってそのまま置いてきちゃった・・・・
綾香たちは隣のクラスの子たちに誘われて屋上に出てしまったので、私一人だ。誘ってくれたけれど屋上はポカポカしていて気持ちいいから眠ってしまいそうで怖かったし、別のクラス子たちとしゃべることはちょっと怖かったから断った。
だから教室にいるわけなんだけど・・・みんな中庭やら屋上やら購買のところやらいろんなところへ散らばっているので教室にいるのは私一人。クラスで飼っているカメしかいない。カメは今日もガラスに爪をかけて脱走を試みようとしている。もちろん助けを求めるのは絶対むり‼
ふだん購買なんていかないからお財布なんて持ってない。今日お昼ご飯ご抜きか。綾香たちもどってくるのお弁当全部食べてからだよね。もらうなんてむりだよね・・・・
「はあっ、もう最悪・・・・」私のつぶやきはしんと静まり返った教室に溶け込まれていった。カメがうるさいぞ、とでも言っているみたいにガラスに爪をかけて音を出している。
空腹を紛らわそうとカメを見たり、景色を見たりしていたけれど、空腹はマシになるばかりかひどくなるばかりでもうほんと最悪・・・・
ガラッ
その時、教室の扉を開ける音がした。誰だろう?先生とか?もしかして綾香?!それなら助かったあ・・・
って思ったけれど扉付近にいたのは月音くんだった。
「あれ?月音くん、どうしたの?」
「購買部のカフェテリアのところでご飯食べてたんだけど、女子が絡んできてうるさいし、うっとうしかったから食べてたパン持って教室に逃げてきちゃった。」
「そうなんだ。」確かに月音くんお昼時、やばそう。
「それより衣川こそどうしたの?もう昼ご飯食べたの?」
「実は・・・お弁当家に忘れちゃって。綾香たちは別のクラスでお弁当食べてるし、もらえる人誰もいなくて、困ってたの。」
「綾香たちって河林のことだよな?大変だな。おなか、すいてるだろ。ここならだれもいないし大丈夫。」月音くんはそう言って、私の隣の人の席に座って、購買部に売っている未開封のカレーパンの袋を破って差し出してきた。
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