クールなエリートSPは極悪か溺甘か ~買われた新妻は偽りの旦那様の執愛から逃れられない~
一応、瑛輔には遅くならないように言われたし、安全面において心配をかけている身なので連絡を入れる。
すると『今から帰ります』の文字に速攻で既読がついたので驚く。さらに間髪入れず送られてきたメッセージに、思わず「えっ」と声を上げた。
佐々木がのんびりと帰り支度をしつつこちらに視線をやる。

「文月? どうした?」
「あ、ううん。 帰宅報告したら、瑛輔が迎えに行くって」
「あらまぁ、お熱いですな〜」
「そ、そんなんじゃないけど……」

でも、どうしたんだろう。タクシーを使うつもりだったし、瑛輔が進んで護衛してくれなくても大丈夫なのに。彼もそれは分かってるはず。
気まぐれかな。ドライブをしたい気分だったとか。
やっぱり瑛輔のことはよく分からない。

と、そこで頭にチラつく真紀の言葉…『誘惑』――いや、ムリムリムリ。今夜は寝顔を見るだけだと思っていたのが、今から会うのに!

そんな事考えてたらまともに顔見れないわ!

「か、風に当たりたいから、外で待ってようかな!」

たまらず食事代をテーブルに置いてそそくさと上着を羽織り、真紀の間延びした返事を背に店を出た。

落ち着け。瑛輔は…そうだ、猫だ。その時の気分で行動を決めちゃう自由気ままな猫。うん、可愛いじゃない。猫だと思えばただただ可愛いだけよ……猫を誘惑する人間なんていないわ。

「文月! ひとりで出たら危ないだろ。店の前とは言え、酒も入ってるんだし」
「あ、りがとう。 お会計、真紀が?」
「あいつはあんなもんじゃ酔わないから心配ない。酒豪なんだよ」
「ふふ。 真紀と佐々木って、ほんと仲良いわよね。阿吽の呼吸? 夫婦?…は、言いすぎか」
「え、全く嬉しくないんだけど…」

不服そうな佐々木に、くすりと笑う。

「俺はさー」

疎らに星が光る空を見上げながら、佐々木がぼんやりと言う。

「文月とそうなれたらいいって、思ってたんだけどなー」
「え、?」
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