November〜特別な一日〜
「お待たせしました〜！コーラとオレンジジュースです！」

杏奈も店員として忙しく動き回っていた。二人組の男性客のテーブルにジュースを置く。お辞儀をして立ち去ろうとしたのだが、その手を掴まれてしまった。

「えっ？な、何なんですか？」

「君、すごく可愛いね〜。これから暇？俺らと文化祭回ろうよ！」

「一緒に三組のお化け屋敷行こうよ。俺らが守ってあげる」

男性二人の力は強く、痛みから杏奈は顔を顰めた。恐怖が心の中に生まれる。慌てて周りを見たものの、クラスメートたちは見て見ぬふりを貫いた。

（どうしよう……怖い……）

泣き出してしまいそうになったその時だった。男性の手を何者かが強く掴んだ。

「おい！その手を離せ！」

杏奈は助けてくれた人物を見て彼女の胸が高鳴る。そこにいたのは、王子の衣装を見に纏った健斗だった。

「チッ。彼氏持ちかよ」

悔しげに男性たちはそう言い、気まずそうにコーラとオレンジジュースに口をつけた。ホッとする杏奈の手を健斗が引いた。
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