November〜特別な一日〜
もしも劇が失敗すれば自分のせいだ。そんな思いから杏奈は唇を噛み締める。しかし、健斗は真剣な表情を崩すことはなかった。杏奈の両肩に置かれた手に少し力が入る。

「あのオーディションで霜月の演技が一番いいと俺は思った。それだけじゃダメか?」

その言葉に嘘はなかった。



劇で行われるのは眠り姫だ。オーディションを受けた杏奈は台詞などはきちんと頭に入っている。ピンク色の可愛らしいドレスに着替え、スポットライトが照らす舞台に立った。

劇は順調に進み、やがてラストシーンに近付いていく。呪いによって眠ってしまったお姫様を王子様がキスで起こすシーンがやってきた。当然本当にキスをするわけではない。

「ああ、とても綺麗な人……」

王子様役の健斗が近付いてくる。そして杏奈の頰に触れた。杏奈は胸の鼓動が高鳴るのを感じながら目を開けようとする。その時だった。

唇に柔らかな感触が触れる。驚いて目を開けた杏奈の先にあったのは、視界いっぱいに広がる健斗の顔だった。

「おはよう、お姫様」

そう言い、悪戯っぽく健斗は笑った。
< 5 / 5 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

響け!シャガのクレッシェンド

総文字数/11,013

ファンタジー26ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
ひまわり、マリーゴールド、ヤグルマギク、カスミソウ……。 世界にはたくさんの植物で溢れている。まるで音楽みたいに、どれもこれも個性で溢れている。 でも、植物は美しいだけじゃない。毒を持つもの、人を狂わせるものも存在するんだ。
Catastroph

総文字数/6,700

ファンタジー16ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
誰も知らないおとぎばなし
私の体にメスを入れて

総文字数/6,686

恋愛(その他)16ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
本当の名前でほら呼び合って

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop