The previous night of the world revolution5~R.D.~
国が、国民が疲弊しているところに、宗教が入り込んできた。

乾いた人々の心には、砂漠にもたらされた雨のごとく染み渡っていく。

溺れているところに投げられた、一本のロープのようなもの。

そのロープを無理矢理断ち切れば、どうなるか。

言わずとも分かろう。

「過去に前例がなかっただけに、この事態にどう手を出したら良いのか、誰も分からないんですよ」

「…」

このまま国民感情に任せて、新興宗教を公然と認めて良いのか。

それとも彼らを粛清し、国家としての威厳を保つべきなのか。

何処まで譲歩すれば良いのか。何処で妥協すれば良いのか。

「…俺がまだ帝国騎士団にいたとしたら、多分、俺も判断に困ってたと思います」

「…お前でもか」

「えぇ」

宗教というものは、恐ろしい。

人々の心を鷲掴みにして離さない。

例えるなら、俺がルルシーに執着しているのと同じだ。

ルルシーを愛している。ルルシーを信じている。ルルシーは俺の救い主。

ルルシーの為なら、命を捨てても構わない。

ルルシーの為なら、何を敵に回しても構わない。

ルルシーを守る為なら、何でもする。

いつもいかなるときでも、ルルシーが俺の心の中に、魂の中に刻み込まれている。

「ルルシー」の部分を神と置き換えてみろ。彼らはそういう気持ちなのだ。

あら、なんて分かりやすい。

そんな狂った妄執的な人間達を、どうやって扱えば良いのか。

「歴史の中で人間達は何度も争い、戦争を起こしてますが、その根源にあるのは、宗教対立であることがままあります」

「…そうだな」

歴史書を紐解いてみれば良い。

信じる宗教を異にする者同士の争いなんて、掃いて捨てるほどある。

信じてない者は、そんなことで争うなんて馬鹿馬鹿しいと思うだろう。

でも、決して馬鹿馬鹿しい問題ではないのだ。

信じる者にとって、神とは、神の教えとは、自分の生きる世界そのもの。

彼らは自分の存在意義の為に戦っている。

信仰は、それだけの力を秘めている。

決して、馬鹿にしてはいけないものなのだ。
< 126 / 627 >

この作品をシェア

pagetop