The previous night of the world revolution5~R.D.~
「偶然…なのか」

「えぇ。それに今時は、インターネットが大衆に普及して、誰でも簡単に教えに触れることが出来ます」

布教も簡単。

マルチ商法みたいに、一人から何本も何本も枝分かれして、色んなツールを使って、信者が増えていく。

大昔みたいに、各地を回る宣教者なんていなくても良い。

ちょっとパソコンを開いて、ちょちょいっと掲示板にでも書き込めば、多くの大衆の目に触れることが出来る。

一度インターネット上に流出してしまえば、その痕跡を完全に消すことは不可能に近い。

誰か一人にでも伝わってしまえば、その一人から更に広がっていく。

信仰を他人に強制することは出来ない。

一度信じてしまえば、それを忘れさせる術はない。

「それに昔は、まだアメリア教が廃れていませんでしたから…」

ルティス帝国だって、昔から無宗教の人間ばかりだった訳じゃない。

未だにルティス帝国の国教がアメリア教とされているのは、かつてルティス帝国民の大半が、敬虔なアメリア教徒だったからだ。

だから、新興宗教を立ち上げても、既にアメリア教を信じている人々は、全く相手にしなかった。

でも、時がたつにつれて、かつてのような熱心なアメリア教徒は少なくなっていった。

物理的に豊かになった社会に、宗教は必要なかったのだ。

まぁ、それでも信じてる人は変わらず信じてるのだろうけど。

以前ほど、重要視されなくなっていった。

「…なぁ、ルレイア」

「はい?」

「お前は、もし『天の光教』とやらがもっと勢力を増して、政府を牛耳るようなことになったら…どうする?」

…うーん。

「…好きにすれば良いんじゃないですか?」

「…軽いな…お前…」

「だって、それで困るのは帝国騎士団とお貴族様だけですし~。今のところ『青薔薇連合会』に実害がある訳じゃありませんし~」

俺は国教が何になろうが、どうでも良い。

俺が信じてるのはルルシー神と死神だけだし。

「国教が何になろうと、王政や帝国騎士団がなくなろうと『青薔薇連合会』の活動に害がないなら、どうでも良いですよ、俺は」

むしろ、なくなっても良いんじゃないの?

どうせ糞みたいな奴らなんだし。

古い糞が新しい糞に変わるだけで、糞に変わりはないし。

あらやだ。言葉遣いがお下品。

「そりゃまぁそうだけど…。俺達、『天の光教』については、何も知らないじゃないか。あいつら、一体どういう教えで、何を目的にしてるんだ?」

「確かに…。彼らの教義については、何も知りませんね、俺達」

なんか…自由がどうとか、平等がどうとか言ってた気はするけど。

そういや、アイズが『天の光教』の本を持ってたっけ。

あれ、貸してもらおうか?

なんて思っていると。

「失礼します」

ノックと共に、一人の女性がルルシーの執務室に入ってきた。
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