The previous night of the world revolution5~R.D.~
「…ルチカ・ブランシェット教祖」

「何でしょう」

「あなたは卑怯な人間だな」

…オルタンスよ。

俺、もう止めないからな。自分で責任取れよ。

「…何故ですか?」

「平等を謳いながら、自分は何だ。自分だって教祖を名乗って、他の信徒の上に立ってるじゃないか」

「私は神の代弁者として、信徒達に教えを説いているだけです。信徒達との立場は彼らと同じです」

「そうか。じゃあ俺も、国政の代弁者として、国を統治しているだけだ。人間としての立場は国民と同じだぞ」

ここに、小学生並みの口喧嘩が勃発。

お互い良いレベルだな、おい。

「政権に興味がないと言いながら、やろうとしていることは政権奪取に他ならない。王政を打破して、帝国騎士団を打破して、その後誰が政権を握るんだ?他でもない自分じゃないか」

「…」

「言葉は巧みだし綺麗だが、あなたのそれは野心家以外の何物でもない。神の威を借りながら、自分が権力の頂点に立とうとしているようにしか見えない」

「…」

…言葉は悪いが。

オルタンスの言っていることは、ここにいる隊長連全員の総意だ。

要するに、宗教団体の顔をしながら、結局のところあんたらは政権奪取を狙ってるんだろ、と。

それに対し、ルチカ教祖の答えは。

「…権力、政権、王権…。あなた方の思考は、そこで止まっているのですね」

「…何?」

「人に寄り添うことではなく、人の上に立つことしか考えてないということです」

「愛で腹が膨れるなら、いくらでも誰でも愛するが」

同感だな。

綺麗事だけで、政治は出来ない。

「神が私達に与えてくださった資源は有限であり、限られています。だから、誰かが独占するのではなく、皆平等に分け与えなくてはなりません」

「王族や貴族が独占していると?」

「違いますか?」

…分からなくはない。

要するにこの女は、社会主義的思考なのだ。

国民は皆平等。生活は国が保証するし、衣食住に困ることはない。

確かに理想的だとは思う。

でも、それが出来るほど人類が進化しているとは思えない。

「人間というのは、隣人を見たとき、自分の方がより優位に立ちたいと考える生き物だ。多少ズルをしてでも、自分だけ得をしたいと思ってしまうんだ」

「…」

「人間に欲求がある限り、社会主義が成功するとは思えない」

…同感だ。

人間は、愚かな生き物だからな。

平等に扱ってくれと言いながら、本当に平等に扱われたら、「あいつより俺の方が優れてるのに、平等に扱われるのは不等だ」なんて言い出す始末なんだから。

平等が聞いて呆れる。

しかし。

「だからこそ、私達には神を信じることを許されているのではないですか」

政治の話をしていたかと思ったら。

今度は、宗教の話が出てきた。
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