The previous night of the world revolution5~R.D.~
日頃、ルレイアの口の悪さには閉口するが。

今日は、オルタンスの口の悪さに心臓が縮み上がる。

「貴様!ルチカ様になんということを!」

ほら見ろ。耐えかねた側近がめっちゃ怒ってる。

そりゃ怒るわ。

ルチカ教祖は、声を低くして答えた。

「…どういう意味ですか。私は敬虔なる神の信徒です。そこに嘘偽りはありません」

「そうか。いや、言っていることの割には、あなたがあまりに過激なことをするものだから。もしかしたら、別の意図があるのかもしれないと思った」

「…別の意図、ですか?」

「例えば…宗教を利用して国家転覆を狙い、政権を手に入れようとしている、とか」

「…」

例えば、じゃねぇだろお前。

ド直球じゃねぇか。

「…教祖である私の信仰心を疑われるとは、非常に遺憾です。私は神の信徒。それ以上でも、それ以下でもありません」

「ならば、政権には興味はないと?」

「えぇ、ありません」

ルチカ教祖はきっぱりと答えた。

嘘を言ってるようには見えないが…。

「だったら、何故宗教家が政治に首を突っ込もうとする?」

言葉にトゲがあり過ぎるぞ、オルタンス。

お前ら迷惑なんだけど、って言外に言ってるようなもんだ。

確かに迷惑なんだけど。

「私は政治に首を突っ込んでなどいません」

「王政批判や、貴族制度の批判を、教祖が声を大にして信徒に聞かせることの、何処が政治に首を突っ込んでないことになるんだ?」

「私は事実を言ったまでです。あなた方が富や利権を独占しているから、貧しい人々が苦しむ羽目になるのです」

「貧しい人々が苦しんでいるのは、不景気だからだ。王政や貴族制度のせいじゃない」

正論である。

が、王政を嫌っている者に、そんな正論は通じない。

「王族や貴族が持っている富を、国民に配れば、国民達は救われます」

「そうか」

そうかってお前。

「国民達が飢えに苦しみ、貧しい生活を強いられているのに、あなた方は毎食捨てるほどの食糧を口にし、温かい布団で寝ている」

「そうだな」

そうだなじゃなくて、少しは否定しろ。

「おのれの幸福のことしか考えぬから、そんな傲慢なことが出来るのです。私達は同じ人間で、差別されるべきではないはずなのに…」

「…」

…差別…差別か。

ルレイアも、このことでルチカ教祖と喧嘩していたな。

生まれの違いを差別と言われてしまっては、議論にならない。
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