The previous night of the world revolution5~R.D.~
仕方なく、僕はマリアンナという少女に付き合って、王宮の庭園に出た。

僕にとっては見慣れたものだが、招かれたとき以外に見ることの出来ない美しい庭園に、マリアンナは感嘆の声をあげた。

「まぁ、なんて美しい庭園でしょう」

お洒落な日焼け対策のパラソルを差して、マリアンナは庭園を見渡した。

小薔薇のアーチ、洒落た噴水、色とりどりの花々。

「殿下は良いですわね。毎日こんな素敵な庭園を見ることが出来て…」

「…そうですか?」

毎日見てたら、飽きるけどな。

それとも、自分もここに住んで、つまり僕と結婚して、毎日見られるようになりたい、と遠回しに言ってるのだろうか。

そんな風に勘繰ってしまう。

「是非、絵画にしたいですわ。私、絵を描くのが趣味なんです」

「…ふーん…」

「殿下は、絵画はお好きですか?」

絵画だと?

「好きでも嫌いでもないですが…」

「絵は、あまり描かれない?」

「少し齧るくらいは…」

これも王族のたしなみとばかりに、絵画の教師が来て、教えていってくれたよ。

何の役に立つのか、さっぱり分からなかった。

「なら、今度ここにカンバスを持ってきて、一緒に風景画を描きませんこと?この綺麗な景色を、絵に残さないのは勿体ないですわ」

「…」

…写真で良くない?

中世の時代じゃないんだから。

そう思ったが、さすがに言わなかった。

マリアンナ少女は、しずしずと小さな歩幅で歩きながら、庭園を見て回った。

「あ、あの花はリンドウですわね」

「…」

「あちらの花は、アリッサムですわね。とても綺麗に咲いていますわ」

「…」

いちいち、花の種類を解説してくれる。

「花に詳しいんですね」

それも、淑女のたしなみなのか?

「えぇ。私、昔からお花が好きで…。よく自宅の庭園を、絵に描いたものですわ。勿論、うちの庭園は、この立派な庭園には遥かに及ばないのですけど…」

「…へぇ…」

それでもアルヴァール家の邸宅となれば、庭の広さも相当なものだろう。

セカイさんは、花は好きなんだろうか。

「あちらはダリアですわね。ご存知ですか?ダリアの花言葉は、優雅、気品なんですよ」

「そうなんですか」

「ふふ。まるで殿下のようなお花ですわね」

毎晩寝る前にエロ本読んでるけど、それでも僕は優雅なんだろうか?

僕はマリアンナ少女の花に関するうんちくを聞きながら、庭園をぶらぶらと歩いた。

楽しいと言うよりは、公務をこなしているような気分だった。
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