The previous night of the world revolution5~R.D.~
「これを見たところ…アイズ先輩の現在地は、帝都外れの廃工場跡地のようだ」

ルリシヤが、マップを示しながら言った。

ここにアイズが…。

「じゃあそこに行く!今すぐ行く!」

居場所が分かるなり、アリューシャは飛び出そうとした。

気持ちは分かるけど。

「落ち着けアリューシャ先輩。居場所が分かっても、アイズ先輩を拉致した者の素性が分からないことには…」

「そんな悠長なこと言ってられるか!敵がいるなら、アリューシャが全部撃ち抜く!」

今のアリューシャなら、やってしまいそうだな。

俺がそうだったように。

ここは、決断のときだ。

「…ルレイア?」

何かを考え込む俺に気づいたのか、ルルシーが声をかけてきた。

「…アイズがいない今、作戦指揮を取れるのは、順当に行けばシュノさんか、アリューシャ…」

今まで幹部組の中で、特に序列は決まっていなかった。

ただ、一番古参組で、しかもアシュトーリアさんから直々に次期首領と指名されていることから、幹部の中ではアイズがリーダー的存在だった。

それに、俺達の中で一番、作戦指揮官として秀でているのもアイズだったから。

俺達はアイズの指揮に従って動いていれば、それで良かった。

でも、今回は違う。

そのアイズがいなくて、アシュトーリアさんもいない。

幹部になった順番で指揮権を委託するなら、シュノさん…それにアリューシャ、ルルシー。

だが、誰でも良いという訳ではない。

「私が…指揮を…」

シュノさんは、不安そうな顔で俺を見つめた。

頼めば引き受けてはくれそうだが、自信がないのだろう。

それもそのはず。シュノさんは元々、前衛で実働部隊として働くタイプだ。

後衛で、全部隊の作戦行動を指示するという任務は、ほとんど経験がないだろう。

それに。

「…アリューシャは無理だよ」

言うまでもない。

アリューシャの職務は、いつだって格好良く成層圏の果てまで撃ち抜くこと。

後衛で作戦指揮なんて、まず無理だ。

こう言っちゃ悪いが、アリューシャは、考えて部下を動かすタイプじゃない。

アリューシャの強みが最も生きるのは、単独行動で、狙撃だけに集中させること。

だから、アリューシャが作戦指揮官は不可能。

ならば、順当に行けばルルシーだが…。

「…ルルシー、あなたが…」

「お前がやれよ、ルレイア」

ルルシーは、俺の言葉を遮るように言った。

「俺もシュノと同じだ。裏方で作戦指揮なんて向いてない。序列とか年齢とか、そんなものは関係ない。この中で作戦指揮官が務まるのは、お前とルリシヤ。二人だけだ。お前達で相談して決めろ。俺達は、それに従う」

「…ルルシー…。ありがとうございます」

頼むまでもなく、ルルシーは自分から身を引いてくれた。

ルルシーを侮辱するつもりも、軽んじるつもりもない。

だが、ルルシーもシュノさん同様、作戦指揮官にはあまり向いていない。

後衛で全部隊の戦況を順次把握し、その場で各部隊に適切な行動を指示する。

広い視野、的確な判断力かつ、それらを迅速に判断、伝達する能力が必要だ。

こればかりは、それなりの才能と、訓練と、経験がなければ、身に付けられるものではない。

ルルシーは帝国騎士官学校に二年ほど在籍して、その類の勉強をある程度しているけれど…。

…残念ながら、それだけでは訓練不足。

従って、この場で作戦指揮官が務まるのは。

帝国騎士官学校と、その後帝国騎士団で鍛練と実践を積んだ俺。

そして。

天性のカリスマを持ち、『セント・ニュクス』をまとめていたルリシヤだけなのだ。
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