エリート脳外科医の長い恋煩い〜クールなドクターは初恋の彼女を溺愛で救いたい〜
柊哉side
午前中オペに入り、麻酔から目覚めた患者さんの容体も落ち着きひと段落した頃。結城から「これから彼女の回診に行くけど顔出すか?」と連絡があった。
すぐに病室へ向かい診察が終わるのを待っていると、結城が出てきて「後はごゆっくり」とニヤニヤしながら俺の肩を叩いて行く。
正直、彼女に会って何を話すかも決めていない上にどんな反応をされるのかと思うと少し躊躇ったが、一度深呼吸をしてからドアをノックした。
返事を聞きゆっくりとドアを開けると、可愛らしい薄いピンクのパジャマを着て肩下まである髪の毛を下ろした彼女が身体を起こしてこちらを見ていた。二.三秒程キョトンとしていたが、何かに気づいた様にハッと目を見開いた。
「体調はどう?昨日よりだいぶ顔色は良くなったように見えるけど」
「は、はいお陰様で...。あの...香月先生、ですよね?」
「まだ名乗っていなかったね。今日から脳外に戻った香月柊哉です」
「ク、クラークの宮野優茉と申します。この度は大変なご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした!」
「迷惑なんて思っていないよ、それに治療したのは結城だから」
強張った様子で掛け布団におでこが付くほど勢いよく頭を下げた彼女だが、俺の言葉にゆっくりと顔を上げる。
「あの時先生が通りかかって下さって本当に助かりました。ありがとうございました」と今度はほっと安心した表情でふわっと可愛らしい顔で微笑む。
その顔を見て、俺はそんなに怯えるほど怖そうな奴に見えていたのか...?と内心少しショックを受けていた。
「ちなみに、喘息はいつから?」
「えっと... 子どもの頃からなんです」
「入院するような事は初めて?」
「何度かここの小児科にお世話になりました。大人になってからは、初めてです...」と少し罰が悪そうに目を逸らす彼女。
「荷物はご家族が?入院は長引きそうなの?」
「さっき着替えを届けてもらいました。結城先生には最低でも三日間と言われましたが、まだ決められないと...」
「貧血もあったみたいだし焦らずゆっくり休むといいよ」
「はい、お仕事の事もあるので早く復帰出来るように頑張ります」
「ふっ、俺の話聞いてた?喘息も貧血も長期戦だから、焦ることはないよ」
「あ、すみません...」そう今度は少し恥ずかしそうに頭を下げた。
あたかも医者としての質問をしているように会話を続ける俺に、この数分でも様々な表情を見せる彼女から目が離せなくなっていた。
荷物の横に卵焼きのようなものが入ったパックが見えていて「それは?」と指さすと嬉しそうに微笑む。
「だし巻き卵です。私の好物なので持ってきてくれたんだと思います」
「お母さんが?」
「いえ、祖母です。母は亡くなっているんです」
「...ごめん、掘り下げたことを聞いて」
「いえ、亡くなったのは私が一歳になった頃なので。お気になさらずに」そう言って微笑んでいる彼女の笑顔は、あの時と同じように儚さと少しの憂いが含まれているように見えた。
その表情を変えたくて他の話をしようと思った時、病棟からの呼び出しが入る。
「ごめん、呼び出しだ。昨日より元気そうな姿が見られて安心したよ。また倒れないように無理はしないこと。じゃあお大事に」
病室を出て病棟へと歩きながら、先ほどの会話を思い出す。警戒されている雰囲気も伝わってきていたのに、彼女の顔を見た瞬間から感じていた事を確かめずにはいられなくなっていた。
医療的な質問を装って過去の入院歴を聞いたり、わざと母親の存在を確かめたり...。やりすぎたか?変な奴だと思われただろうか...。
でも後悔はしていない。俺は確信したから。
さっきの会話の内容と、パジャマ姿に少し癖のある髪、幼さが残る素顔。
やっぱり彼女は、あの時の女の子だ。
午前中オペに入り、麻酔から目覚めた患者さんの容体も落ち着きひと段落した頃。結城から「これから彼女の回診に行くけど顔出すか?」と連絡があった。
すぐに病室へ向かい診察が終わるのを待っていると、結城が出てきて「後はごゆっくり」とニヤニヤしながら俺の肩を叩いて行く。
正直、彼女に会って何を話すかも決めていない上にどんな反応をされるのかと思うと少し躊躇ったが、一度深呼吸をしてからドアをノックした。
返事を聞きゆっくりとドアを開けると、可愛らしい薄いピンクのパジャマを着て肩下まである髪の毛を下ろした彼女が身体を起こしてこちらを見ていた。二.三秒程キョトンとしていたが、何かに気づいた様にハッと目を見開いた。
「体調はどう?昨日よりだいぶ顔色は良くなったように見えるけど」
「は、はいお陰様で...。あの...香月先生、ですよね?」
「まだ名乗っていなかったね。今日から脳外に戻った香月柊哉です」
「ク、クラークの宮野優茉と申します。この度は大変なご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした!」
「迷惑なんて思っていないよ、それに治療したのは結城だから」
強張った様子で掛け布団におでこが付くほど勢いよく頭を下げた彼女だが、俺の言葉にゆっくりと顔を上げる。
「あの時先生が通りかかって下さって本当に助かりました。ありがとうございました」と今度はほっと安心した表情でふわっと可愛らしい顔で微笑む。
その顔を見て、俺はそんなに怯えるほど怖そうな奴に見えていたのか...?と内心少しショックを受けていた。
「ちなみに、喘息はいつから?」
「えっと... 子どもの頃からなんです」
「入院するような事は初めて?」
「何度かここの小児科にお世話になりました。大人になってからは、初めてです...」と少し罰が悪そうに目を逸らす彼女。
「荷物はご家族が?入院は長引きそうなの?」
「さっき着替えを届けてもらいました。結城先生には最低でも三日間と言われましたが、まだ決められないと...」
「貧血もあったみたいだし焦らずゆっくり休むといいよ」
「はい、お仕事の事もあるので早く復帰出来るように頑張ります」
「ふっ、俺の話聞いてた?喘息も貧血も長期戦だから、焦ることはないよ」
「あ、すみません...」そう今度は少し恥ずかしそうに頭を下げた。
あたかも医者としての質問をしているように会話を続ける俺に、この数分でも様々な表情を見せる彼女から目が離せなくなっていた。
荷物の横に卵焼きのようなものが入ったパックが見えていて「それは?」と指さすと嬉しそうに微笑む。
「だし巻き卵です。私の好物なので持ってきてくれたんだと思います」
「お母さんが?」
「いえ、祖母です。母は亡くなっているんです」
「...ごめん、掘り下げたことを聞いて」
「いえ、亡くなったのは私が一歳になった頃なので。お気になさらずに」そう言って微笑んでいる彼女の笑顔は、あの時と同じように儚さと少しの憂いが含まれているように見えた。
その表情を変えたくて他の話をしようと思った時、病棟からの呼び出しが入る。
「ごめん、呼び出しだ。昨日より元気そうな姿が見られて安心したよ。また倒れないように無理はしないこと。じゃあお大事に」
病室を出て病棟へと歩きながら、先ほどの会話を思い出す。警戒されている雰囲気も伝わってきていたのに、彼女の顔を見た瞬間から感じていた事を確かめずにはいられなくなっていた。
医療的な質問を装って過去の入院歴を聞いたり、わざと母親の存在を確かめたり...。やりすぎたか?変な奴だと思われただろうか...。
でも後悔はしていない。俺は確信したから。
さっきの会話の内容と、パジャマ姿に少し癖のある髪、幼さが残る素顔。
やっぱり彼女は、あの時の女の子だ。