きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~
 ジェレミーが12歳になると、貴族学院で同級生になる貴族子息達と入学前に交流する為に、伯爵家の社交を担い王都邸で暮らす奥様の元へ送られる事になった。

 その上、若様は隣のご領主のカートライト伯爵令嬢とのご婚約が決まって、いくら幼馴染みであっても、これ以上若様の隣に居ることは許されない、と周囲から注意される前に、リデルは身を引いた。

 

 もう、彼は次期ご領主様のジェレマイア様で。
 リデルと手を繋いでくれたジェレミーじゃない。


 何度も自分に言い聞かせた……それなのに。
 それは、当然の事なのに。
 改めて思い知らされるのが怖くて、嫌で、辛くて。

 王都から帰省中の若様と会えば、変わらずに声をかけてくれるので、物理的に顔を合わせないように、彼が居る夏休みと冬休暇は決して本邸には近付かなかった。
 

 そうやってジェレマイアを避け続けたリデルは、エラと同じ医療科を卒業したが、騎士団の医療部で働くのは止めた。


 貴族学院を卒業したら、若様はお戻りになる。
 3歳年下のご婚約者様の卒業を待ち、それから2年以内には婚姻されるだろう。

 本邸で働けば。
 同年代の看護士のリデルには、若奥様の妊娠中のお世話を命じられる可能性も高い。
 若様と、彼の愛する若奥様と、そしてお子様と。
 ずっと見ている事になる。

 耐えられないと思った。


 父には「親子で同じ職場は……」と、領内の治療院で働きたいと伝えた。
 娘の希望を黙って聞いてくれた父は、治療院の知り合いに連絡を取り、医療施設管理者との面談を取り付けてくれた。


 そして、その希望が叶い。
 リデルが領内3ヶ所にある内の南地区治療院の看護士として働き出して、半年が過ぎた今。
 ジェレマイアが領地に戻されてから、約2週間が過ぎた今。


 何故か今、リデルは伯爵家の馬車に乗せられて、ジェレマイアが待つ本邸に向かっている。

 どうして、こんな事になってしまったのか。


 今日の午前の診療を終え、治療院の扉に休診の札を掛けて、15時まで休憩に入るところで、本邸からの使いが来た。
 対応したのは院長で、直ぐにリデルが呼ばれ、至急本邸に向かうように告げられた。


「ジェレマイア様が倒れられた。
 リデル・カーターの看護を、とご指名された」




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