わたしを「殺した」のは、鬼でした
 ***

「帯はこれとそれ、あとそちらかしら?」
「…………あ、あの……」

 お掃除の途中で牡丹様に呼ばれてお部屋について行ったわたしは、部屋の中にたくさんの着物がかかった衣架が並べ荒れているのを見て言葉を失った。
 どうやら牡丹様がお店から運ばせた着物と帯のようだ。
 広いお部屋にずらりと並んだ華やかな着物や帯は圧巻だが、わたしの心臓は穏やかではいられなかった。
 なんと、わたしの着物を買うために用意させたと言うのだ。

「牡丹様、わたしは、高価なお着物をいただいても、着ていくところがございませんので……」
「まあまあ、着ていくところがないですって? 千早はなんて甲斐性がないのかしら。大丈夫よ、外出の機会ならいくらでも作らせるから」

 ……ええっと、そういう意味で言ったのではないのだけれど……。

 着物をお断りしようと思ったら、外出の機会まで合わせて用意すると言われてしまった。
 おろおろしている間に、襦袢やら小物類まで選ばれていく。

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