わたしを「殺した」のは、鬼でした
「わたしのここは、ずっと寒かったんです。でも、最近はぽかぽかしています。鬼になれて……千早様にお仕えできて、わたしは嬉しいです。ありがとうございます」

 千早様とつないでいない手をそっと心臓の上に当てる。
 寂しさや悲しみなどとうの昔に消え去って、いつ「処分」されるのだろうかと、絶望と諦念を抱えて生きてきた。
 心が動けば苦しいから、極力感情を揺らさないようにと――そうすることで、心はだんだんと凍り付いていたのかもしれない。
 いつの間にか心が寒くて、でもそれにすら目を背けて、ただ終わりがいつ来るのかと、それだけを思いながら生きてきた。
 そんな凍った心は、鬼の隠れ里に連れて来られて、いつの間にか溶けていて……今は、暖かい。

 千早様が与えてくれた熱だ。
 千早様はわたしが生かされているのは千早様の気まぐれだと言った。
 逆を言えば、千早様の気まぐれが続く限り、わたしは生きていていいと言うことだ。
 生きていていいなんて……わたしの生が認められたことなんて、生まれてこの方、はじめてのことだった。
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