わたしを「殺した」のは、鬼でした

怒りと鬼火

 それは、火桶に使う炭をお邸の裏の倉庫に取りに行っていたときのことだった。
 檜垣の間に作られた通用口のあたりから、こんこんと音がして、わたしは炭を十能に移していた手を止めて顔を上げた。

「どちらさまでしょうか?」

 千早様の元にはたまに来客があるけれど、裏の通用口からお客様が来たことはない。
 けれど、無視をするわけにもいかないから、声をかけると、通用口の奥から「お野菜を持ってきました」と声が返って来た。
 毎日のお食事に使う食材はいつも青葉様が仕入れてくださっているけれど、こうして運んでくる方もいるのだろうか。
 わざわざお野菜を持って来てくださったのに、いつまでも通用口の外で待っていただくのも失礼だろう。
 中に入っていただいて、それから青葉様を呼びに行こうと、わたしは通用口の閂を開ける。

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