わたしを「殺した」のは、鬼でした
(ああそうか。先ほどお館様は、俺にもどう思うかと訊ねたんだ)

 千早は自分自身の変化に気づいているのかいないのか。
 だが、少しだけ表情が柔らかくなったように思うのは、青葉だけだろうか。
 頭領である自分自身の言葉が絶対で、鬼たちは彼に意見しない。
 それは、ひどく孤独であっただろう。
 ほかの鬼がどう思うかはわからないが、青葉は、千早にいい変化がもたらされたと思った。
 張り詰めていた糸が緩むように。
 彼の肩の力が、少しばかり抜けたようだ。

 青葉は頭を下げて、静かに微笑む。

「ユキから良い返事が聞けることを、祈っております」






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