弟、お試し彼氏になる。



ブレスレットにネックレス。
どれも細くて繊細なデザインで、すごく上品な可愛さ。


「ん、これも似合う。絢が何でも似合うのは知ってるけど……いや、けどっていうか、俺のエゴでしかないね。俺があげたもの着けててくれるって、見て興奮してるっていう。うーそ。だね、うん、本当。でも、似合ってるのも本当だよ」


(……まだ何も言ってないのに……)


思ったことを口に出す前に、全部ニコニコと否定されてしまった。
あの後、片付けとお風呂を済ませた私たちは、ベッドの上でプレゼントしてくれたアクセサリーを着けたり外したりしている。
貰ったものは本当に一つ二つではなかったけど、似合うかどうかはともかく、どれも軽くて重ね付けしても可愛かった。


「昔もさ。本当は、こういうアクセサリーとかあげたかったんだ。別に、弟でも変じゃないのかもしれないけど、あの頃の俺にはどうしても無理で……一回、俺のやつ貸したことあったよね。貸したっていうか、無理やり絢の手に填めた」

「無理やりじゃ……」


絶対になかった。


『どんなのが好きなわけ』


口調は今より荒かったけど、あの時もそっと着けてくれた。


「でも、絢には大きすぎたし、重かったはずなんだ。それでまた愕然とした。絢が女性なんて、そんなの痛いくらい知ってたつもりだったのに……ごめんね。俺、あの時ひどいこと言った」


『……似合わなかった』


そう言われて、パッと取られちゃったっけ。
そのままの意味だと思ったけど、そういうことだったんだな。


「絢は女。そんなの、一緒に暮らしてもういいってくらい知ってる。そう思いながら、そんなことも配慮できない自分に嫌気が差してたんだ。……あれも、本当は可愛かった。困惑しながら、頼んでもないことをされるがままでいてくれる絢は優しくて……似合うって、抱きしめたかった」


あの頃の話は、どれを取っても切ない。
いつか、今から少し先の未来では、もっと単純に懐かしく甘い話になっていたい。


(私も、もっと悠にあげたい)


私たちは、すれ違ってすらなかった。
本当は通じ合っていたのに、私が拒んだから。
もうそんなことはないよって、たくさん伝えたい。


「でも、やっぱりこの方がいいね。重いと疲れちゃうもんね」

「ん……」


どっちも嬉しい。
悠の気持ち、全部。


「今日は、本当にありがとう。最高の誕生日だった」

「俺こそ。一緒に過ごさせてくれてありがと。受け取ってくれて、幸せ」


泣きたくないのに、また悠の声を聞いて頰を涙が滑り落ちていく。


「絢は優しい。でも、もっと甘えていいんだからね。我儘だって聞きたい。……って、あ。映画観るの忘れてたね。タイトル、何だったっけ」


わざと意地悪を言って、涙を拭いてくれたけど。


「……や……」


嘘を貫き通す余裕も、意地悪だと拗ねる暇もなかった。


「……え」


ベッドから立ち上がろうとする悠の腕を引き留める。

映画は、嘘だ。
そんなの、口実。


「……あ、や……? 」


勘違いだよね。
きっと、他の理由があるんだよね――そう、悠の瞳が揺れる。
でも、そのどちらでもなかった。


「……誕生日だから……」


――だから、なに……?





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