弟、お試し彼氏になる。
『今日は、カップル成立♡ ◯日記念日です! 』
「その後、いかがお過ごしですか? 」
笑っちゃうくらい不自然な文言で、Beside U の通知があった。
(アンインストールするの忘れてた)
それも事実だけど、何となく削除しづらい。
だって、一応、このアプリのおかげで悠と出逢えて、姉でいなくて済むようになって、付き合えたのだ。
古すぎるし、嘘くさい言い方をするなら、恋のキューピッド的な存在を消してしまうなんて、何だか罰が当たりそうな気がして消せなかった。
始まりもすごかったのに、付き合った後に起きたことの方が強烈すぎて、マッチングアプリで出逢った感覚が薄れてなんて、それもすごい矛盾だ。
『もしよろしければ、ニックネーム(または、匿名可)で、お二人のインタビューを掲載させていただけないでしょうか? これからのカップルの為に、ぜひご感想をお待ちしております! 』
「……だって」
「へぇ。何て答えようね。マッチング率、当たってました! ……かな? 他に俺から言えることないもんね。俺は絢だって知ってたし」
「……そ、それなんだけど。よく私に当たったよね……」
さすがにそれは秘密にしておくしかないけど、いくら私をイメージしたとはいえ、驚異の確率だ。
「まあ、絢に辿り着くまでやるつもりだったんだけど、そんなにかからないと思ってたよ。それでも、まさかこんなにすぐ絢に会えるなんて、やっぱり運命ってやつなのかも」
運命の出逢い、か。
そういえば、そんなキャッチコピーだったような。
「でーも。浮気しちゃ嫌だよ。新鮮さが欲しいなら、俺がいくらでも、何でもしてあげる」
「そ、そんなの求めてないから……! 」
「そんなこと言わない。俺は、もっともーっと絢のこと知りたいし、欲しいよ? 」
(それは……私だって)
飽きるわけもないし、慣れたとすら言えないのに勘弁してほしい……とも言い切れない私は、悠自身のことはしっかり求めてしまっていて恥ずかしすぎる。
「んー、でもね。インタビューされても教えてあげられることも少ないし、そろそろアプリ消そうかな。俺もつい、放置してたし」
「そうだよね……」
毎回通知が来ても面倒だし、何よりもう必要ない。
Beside U のカップル成立率がどれくらいなのか知らないけど、私たちみたいにスムーズに成立するって、結構レアなんじゃないだろうか。
「ありがとう」
「何が? 」
さっと画面をなぞっただけで、私のスマホから縁結びの神様は消えてしまった。
私の指先からふと悠の目線が上がって、微笑んでくれる。
悠の笑顔はもちろん好きだけど、何かお礼を言われるようなことしたっけ。