結婚不適合なふたりが夫婦になったら――女嫌いパイロットが鉄壁妻に激甘に!?
(電話をかける前に〝あれ〟を準備しないと)

 史花はメイク道具をしまっている引き出しの隅に忍ばせたメモを取り出した。そこには優成との通話のときに会話に困らないよう、いわゆる〝ネタ〟が書いてある。

 優成とコミュニケーションを取れるようになったのは喜ばしいが、もともと日常の行動パターンに変化のない史花には優成を楽しませるような話題もなければ、技術もない。

 仕事や自宅での些細な出来事を書いているだけに過ぎないけれど、メモがあるのとないのとでは安心感が違う。沈黙はどうも苦手なのだ。
 そこに昨日の出来事を付け加える。


「〝コーヒーカップを割ってしまったので、新しいものを買ってきました〟と」


 思いきってペアにしたが、優成はどんな反応をするだろうか。その点がちょっと心配ではある。
 準備万端整い、スマートフォンの着信履歴を開く。ずらっと並んだ優成の名前を見て、なんともいえずくすぐったい気持ちになる。

 合間に母の名前がひとつふたつあるが、ほぼ優成で埋め尽くされていた。以前は母一色だったため、この変化は大きい。

 いよいよ優成の名前をタップする。三コールで彼が出た。
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