結婚不適合なふたりが夫婦になったら――女嫌いパイロットが鉄壁妻に激甘に!?
(恋の予感……。素敵な花言葉だけど、私には縁のない言葉かも)

 心の中でひっそり呟く。

 たった一度だけ経験した恋は、もう七年も前の二十歳のとき。同じ大学に通う同級生が相手だった。
 いつもたくさんの友達に囲まれている人気者の彼に、必修の授業のノートを貸したのがきっかけで付き合いはじめた。

 背景に埋もれるような目立たない自分にも彼氏ができたと喜んでいたのも束の間、『一緒にいてもつまらない』とあっけなく振られて終わり。その間、わずか一カ月のことだった。

 彼の部屋に招かれ、体を求められたときに『結婚を約束してくれるなら』と言い、彼を興覚めさせたのが決定的な引き金だろう。

(でも結婚するかわからないのに深い関係にはなれないもの。あのときは拒んで正解)

 今思えば、体目的で『結婚するから』と安易に口にしなかった彼は紳士だったのかもしれない。

 それ以降、恋は再び縁遠いものになり、卒業後は仕事ひと筋でここまでやってきた。
 ディスパッチャーの仕事は楽しいし、やりがいもある。このまま〝仕事と結婚〟するのもいいと思っている。

(だから、このポピーみたいにカラフルな恋の予感なんて……)

 たぶん史花には一生訪れない。


「では、みなさん、まずは思い思いに生けてみましょう」


 講師の号令で、生徒たちは色とりどりのポピーを手に取り、給水スポンジのオアシスに挿していった。
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