結婚不適合なふたりが夫婦になったら――女嫌いパイロットが鉄壁妻に激甘に!?
エピローグ
日勤を終え、駅の改札を抜けた史花は家路を急いでいた。
環はあの後、オーシャンエアラインを懲戒解雇となった。航空会社に勤める人間として断じて許容できない行為により、取締役を務めていた彼女の父親が自主退職に追い込まれたのもやむを得ないだろう。
実行役を担った未希とシステム部員も処分されたが、環のパワハラが認められたうえ、やり口が悪質だったため降格と半年間の給与減額だけで済んだ。
ディスパッチャーを目指していた未希の未来が守られ、誰よりもほっとしているのは史花である。未希は、史花と環のいざこざに巻き込まれただけに過ぎないから。
史花の過失は帳消しになり、始末書は当然ながら破棄。気分も新たに仕事に励んでいる。
夕方を迎えてもなお昼間の強烈な暑さをため込み、気温は下がる気配がない。九月に入って一週間が経つというのに真夏同然の空気が、史花の体にまとわりつく。
それを不快に感じないのは、今日が結婚四カ月目の記念日だからなのかもしれない。三カ月記念は優成のサプライズでお祝いしたため、四カ月目の今日は史花から仕掛けたいと考えていた。とはいっても、手料理の夕食を準備する程度だけれど。
(あとはおいしいシャンパンとミレーヌのケーキで花を添えよう)
空港内のワインショップで買ったシャンパンで乾杯して、帰りに足を伸ばしてゲットしたケーキをデザートにすれば完璧だ。