結婚不適合なふたりが夫婦になったら――女嫌いパイロットが鉄壁妻に激甘に!?

　優成が声を荒げる。そんな彼を見たのは初めてだった。

　パイロットとして、同じように航空業界に携わる人間の愚かな行いが悲しくもあるのだろう。事実、史花もそうだ。女性なら一度は憧れたことのある華々しい職業であるＣＡが、自分の尊厳を守るためだけに航空機の安全を脅かしたのだから。たとえそのミスにパイロットが気づくのを見越していたとしても。


「だ、だって……！」
「言い訳はもうたくさんだ」


　優成に冷たく一蹴された環の肩がビクッと弾む。


「キミがここまで愚かな人間だとは思わなかった。史花への悪質極まりない嫌がらせも侮辱も、俺は絶対に許さない。会社には俺から報告しておくから、追ってなんらかの通達があるだろう。覚悟しておくといい」


　優成の最後の言葉で、いよいよ事の重大さを思い知ったのか。環はその場に膝から崩れ落ちた。


「史花、帰ろう」


　優成に促され、彼女に背を向ける。乗り込んだエレベーターの扉が閉まる寸前、環が苦しげに漏らした嗚咽が聞こえた。