結婚不適合なふたりが夫婦になったら――女嫌いパイロットが鉄壁妻に激甘に!?
「ここにサインをくれないか」
「えっ」


 婚姻届だ。テーブルに薄い用紙が広げられる。
 返事をした直後にサインまで求められるとは思ってもみなかった。


「驚かせたか」
「あ、いえ……大丈夫です」


 とは言ったものの、動揺したのは事実。結婚の意思を伝えたくせに、今ひとつ現実味がなかったせいかもしれない。自分の身に起きていることなのに、どことなく他人事のような感覚だった。

 それが今、婚姻届を目の当たりにし、強制的に実感させられている。
 生涯縁がないと思っていた結婚を、史花は優成としようとしているのだ。

 改めて自分に言い聞かせる。


「結婚は覚悟を決めたので書きます」


 腹をくくったことを彼にしっかり伝えるために強く頷いた。
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