結婚不適合なふたりが夫婦になったら――女嫌いパイロットが鉄壁妻に激甘に!?
 見た目が地味なのも大きく影響するだろう。肩甲骨まである髪の毛はいつだってきっちり一本縛り。それもカラーリングは無縁だし、メイクもファンデーションのほかには眉を描いて、色つきリップを塗る程度である。

 人に不快感を与えない程度のヘアメイクのため、街を歩いていると背景に溶け込むくらいに目立たない。パステルカラーに染まる春の景色や、鮮明な青や緑を印象づける夏の景色のほうが、むしろ色鮮やかなのではないか。史花は常日頃からそう感じていた。

 いつだったか高校時代の同級生を街で見かけたとき、なかなか気づいてもらえなかった経験がある。
 もしかしたら自分は、ほかの人からは見えない存在なのかもしれないとひと晩悩んだのはここだけの話だ。


 「ふみちゃんも、たまにはみんなとご飯を食べてきたらいいのに」


 仕事に打ち込んでいた史花に声をかけてきたのは、フライトコントロールセンターの長である木原(きはら)健太郎(けんたろう)だ。
 リスのようにくりっとした目を細め、穏やかに笑いかける。顔の輪郭はもちろん、ぷっくりした鼻もふっくらした頬も、顔のパーツがすべて丸いせいか、顔を見るだけでほっこりする。少々丸みを帯びている体も、人に安心感を与える材料のひとつ。

 そしてその印象に違わず、とても気さくで優しい。
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