結婚不適合なふたりが夫婦になったら――女嫌いパイロットが鉄壁妻に激甘に!?
「なにか悩みでも?」
「いえ、そういうわけじゃありません。本当にほっとして出ただけなんです」
「それならいいけど。これからの季節は天候が不安定になりがちだから、フライトプランも悩ましいね」


 木原はわずかに腰を屈め、窓の外に広がる空を見上げた。
 つい先日、気象庁は梅雨入りを発表したばかり。木原の言うように空模様が安定しない日がくる。


「この時期はふみちゃんのお父さん、横瀬とはフライトプランでよく意見を交わし合ったものだよ」
「そうでしたか」


 亡き父と木原はパイロットとディスパッチャーで職種こそ違うが、同期入社の中でも特別気が合ったそうで、史花が幼い頃には木原がよく自宅に遊びにきたものだ。


「昔は今のような専用システムがなかったからね。地道に積み重ねてきた経験と感覚やセンスがものをいったんだ」
「フライトプランも全部手書きだったんですよね?」
「そうそう。その航空機の巡航速度に対して、どういう風が入るかを予測して電卓で計算してたからね。横瀬とは意見がぶつかることもあったっけ」
「センター長と父のそんなやり取りを見てみたかったです」
< 72 / 294 >

この作品をシェア

pagetop