愛亀に溺愛されてます!?
1話
「よしよし、うーん、今日もかわいいねえ!」
わたしは水槽に手を突っ込み、ペットのカメ太郎の頭を撫でた。
「もう行く時間よ!」
お母さんに呼ばれ、わたしはしぶしぶカメ太郎の元を離れた。
わたし、相澤明希。13歳の中学1年生!
ペットの亀、カメ太郎を愛してやまないの。
だって、歩くの遅くてかわいいし、タレ目なのもかわいいし、おめがの口もかわいいし、小さい手足がかわ…
「ちょっと、明希!いい加減にしなさい!」
お母さんに怒鳴られて、わたしは急いで支度をした。
カメ太郎に行ってきますを言って、部屋を飛びだす。
玄関の鏡で服装チェックして、ドアを開いた。
外に出ると、晴天で気持ちのいい風が吹いていた。
わたしは足を走らせて、学校に向かった。
学校に着くと、ちょうど下駄箱で上履きに履きかえていると、チャイムが鳴った。
教室に行くと、先生に怒られ、みんなに笑われた。
となりの席で友だちの朝比奈ちゃんに腕でつつかれた。
「ちょっと、遅刻なんてどうしたのよ?寝坊?」
わたしは肩をすくめて頷いた。
朝比奈ちゃんがため息まじりに言う。
「明希ったら。どうせ、寝坊したのに亀を見てたんでしょ?」
図星すぎる。本当に朝比奈ちゃんはわたしのことをよく分かっている。
その時1時間目のチャイムが鳴り、授業が始まった。
学校がおわり、わたしは朝比奈ちゃんと並んで歩いていた。
途中で朝比奈ちゃんと別れ、わたしは家に向かって一直線に歩いた。
しばらく真っ直ぐ進んでいると、うちが見えてきた。
家に着き、チャイムを鳴らす。
ドアがガチャッと開き、お母さん…じゃなく知らない男の子が出てきた。
「誰っっ!?」
思わずわたしは声を上げた。
知らない男の子は、ニヤニヤとしている。
「僕が誰か分からないの?」
男の子に聞かれ、わたしは男の子をまじまじと見つめる。
薄緑のおかっぱの髪の毛に、前髪は丸い。服は緑の直線の模様がかかれている着物を着ている。目はタレ目に、口はおめが。
いくら思い出そうとしても、分からなかった。
「分からないです……」
ついに諦めて言うと、男の子は楽しそうに笑った。
「本当?とりあえず、家に入ってきてよ。」
わたしは男の子に続いて中に入り、そのまま洗面所に行った。
顔と手を洗ってタオルで拭き、洗面所を出た。
洗面所の外で男の子が待ってくれていた。わたしは男の子に着いていった。
男の子が入ったのは、わたしの部屋だった。
部屋に入ると、男の子が聞いてきた。
「なにかいつもと違わない?」
わたしは部屋を見渡してみた。隅々までよーく見てみた。
分からない、と言おうとした時、カメ太郎の水槽に目がいった。
カメ太郎がいなかった。
「カメ太郎がいない!」
わたしは大きい声で言った。
男の子が嬉しそうに笑う。
「せーいかい。」
「いや、そんなこと言ってる場合じゃないわよ!」
ついわたしは怒鳴ってしまった。男の子は驚いていた。
わたしは水槽に近よった。
「きっと、どこか隠れてるのよ。」
なんとか平然を保とうとしたけど、無理だった。
水槽の隅々まで見てみたけど、いない。
自然とわたしの目に涙が溢れてきた。
「どこに行っちゃったの?わたしの愛するカメ太郎…」
次から次に涙が出てくる。
「落ち着いてよ。」
男の子の声が聞こえたが、構わずに泣きつづけた。
「…信じてもらえないかもだけどさ、聞いてくれる?」
あまりにも冷静な男の子の声に、わたしの涙が止まった。
男の子が水槽を指さす。そして、今度は自分を指さした。
「僕がカメ太郎なんだ。」
「は?」
思わずわたしはそう言ってしまった。
最初は冗談だと思ったが、だんだんと本当のことだと思った。
水槽にいないカメ太郎。よく男の子を見ると、たしかに男の子はカメ太郎に似ていた。
現実的じゃないけど、信じないほかなかった。
「カメ太郎なの…?」
わたしの声はひどくかすれて小さかった。
だけどカメ太郎には聞こえたみたいで、頷いていた。
途端に、わたしはカメ太郎に抱きついた。
「う…カメ太郎…よかった…」
わたしは小さい子みたいに泣きじゃくった。
カメ太郎がいなくなったわけじゃなかった。それだけでよかった。人間になったことなんて気にしなかった。けど、しばらくして今のカメ太郎が人間の男の子だと気づくと、急に恥ずかしくなった。
カメ太郎は嬉しそうに微笑んでいた。
「そんなに僕のことが好きなの?」
わたしの顔がカッと熱くなった。が、気にせず答えた。
「うん。誰よりもね。」
今度はカメ太郎がわたしに抱きついてきた。
「僕もだよ。ずっと一緒にいようね。」
そう言うカメ太郎の声は甘くて、優しかった。
カメ太郎がわたしから離れると、そっと言った。
「実はね、僕、人間になりたいって思ってたんだ。」
「へ?なんで?」
カメ太郎がニヤリとした。
「だって、僕が君を抱くことができないからね。」
予想外の答えに、わたしは大いにドキドキしてしまった。
なに動揺してるの、わたし。相手はカメ太郎よ?
「そういえば、色々だいじょうぶなの?人間になって。」
落ち着いたわたしが聞くと、カメ太郎はキョトンとしていた。
「なにが?」
「ほら、食事とか生活とか。一気に変わるわけじゃん。それとも、カメの頃と一緒なの?」
カメ太郎はしばらく黙ってしまった。きっと考えているのだろう。
ようやくカメ太郎が口を開いた。
「そうだね、きっと人間仕様になるんじゃない?だから、きっと明希ちゃんと同じってこと。」
やっぱりそうなのか、とわたしは思った。
その時、ドアがガチャッと開いた。
あれ、お母さん?まずいのでは?知らない男の子いるわけだし…
でも間に合わず、お母さんにカメ太郎を見られてしまった。
お母さんは驚いているようだった。まあ無理もない。
「誰、その子?」
お母さんに聞かれ、わたしはなんと答えようか迷っていると、カメ太郎が
「カメ太郎です。」
とあっさり答えたので、お母さんだけじゃなくわたしも驚いた。
「え、なに言ってるのよ。だって、カメ太郎カメで…」
信じられないという顔でお母さんが言う。
カメ太郎がお母さんに水槽を指さした。
「あそこ、見てください。」
水槽を見たお母さんの目が、見開かれる。これも無理ない。
「え?カメ太郎がいない…」
お母さんは唖然として言った。
「そうです。僕はここにいるんですから。」
平然とカメ太郎が言った。
お母さんは混乱しているようだった。
「はあ?カメが人になるなんてことあるの?あ、分かったわ、これ夢ね?」
カメ太郎がむっとして言った。
「夢じゃないです!現実です!」
「いや、でも、そんな…」
お母さんがなにか言おうとしていたが、カメ太郎ににらまれて黙っていた。
「とにかく、ごはんよ。」
それだけ言うと、お母さんは部屋を出ていった。
「やった、ごはんだって!初めて食べるなあ。」
カメ太郎が嬉しそうに言った。
わたしとカメ太郎が部屋を出てリビングへ行くと、お父さんがいた。
あ、これは、また説明しなくちゃならないやつ……
と思っていると、予想通り驚いているお父さんに、カメ太郎が説明していた。
お父さんを説得するのは、そんなに時間がからなかった。
お母さんと違って夢を見ているタイプだから、カメが人になるということも受けいれてくれた。
お母さんはまだカメ太郎を信じられないという目つきで見ていた。
いただきますをして、夕飯のカレーを食べた。
ドキドキしながらカメ太郎を見ると、きちんとスプーンでカレーを食べていた。
すごいなあと感心して見ていると、カメ太郎がわたしにスプーンを指しだしてきた。
わたしがキョトンとしていると、カメ太郎がニヤッと笑った。
「ほら、僕のカレー、食べさせてあげるよ。」
わたしの頬が熱くなった。
だけど食べてみたかったので、照れつつもカメ太郎に食べさせてもらった。
ぱくっと食べると、味が違っておいしかった。
カメ太郎は楽しそうに笑っていた。
ごはんがおわり、わたしとカメ太郎は部屋に戻った。
寝るまでカメ太郎とテレビを見ていた。
初めて見るテレビに、カメ太郎は大喜び、大興奮だった。
あっという間に寝る時間になり、カメ太郎もわたしの布団で寝た。
急に男の子と同じ布団で寝てるんだと思うと、顔が赤くなってきた。
いや、あれはカメ太郎だ、カメ太郎だ……
と思うようにして、わたしは気持ちを落ち着けた。
ドキドキの人間のカメ太郎との生活のスタートです!
わたしは水槽に手を突っ込み、ペットのカメ太郎の頭を撫でた。
「もう行く時間よ!」
お母さんに呼ばれ、わたしはしぶしぶカメ太郎の元を離れた。
わたし、相澤明希。13歳の中学1年生!
ペットの亀、カメ太郎を愛してやまないの。
だって、歩くの遅くてかわいいし、タレ目なのもかわいいし、おめがの口もかわいいし、小さい手足がかわ…
「ちょっと、明希!いい加減にしなさい!」
お母さんに怒鳴られて、わたしは急いで支度をした。
カメ太郎に行ってきますを言って、部屋を飛びだす。
玄関の鏡で服装チェックして、ドアを開いた。
外に出ると、晴天で気持ちのいい風が吹いていた。
わたしは足を走らせて、学校に向かった。
学校に着くと、ちょうど下駄箱で上履きに履きかえていると、チャイムが鳴った。
教室に行くと、先生に怒られ、みんなに笑われた。
となりの席で友だちの朝比奈ちゃんに腕でつつかれた。
「ちょっと、遅刻なんてどうしたのよ?寝坊?」
わたしは肩をすくめて頷いた。
朝比奈ちゃんがため息まじりに言う。
「明希ったら。どうせ、寝坊したのに亀を見てたんでしょ?」
図星すぎる。本当に朝比奈ちゃんはわたしのことをよく分かっている。
その時1時間目のチャイムが鳴り、授業が始まった。
学校がおわり、わたしは朝比奈ちゃんと並んで歩いていた。
途中で朝比奈ちゃんと別れ、わたしは家に向かって一直線に歩いた。
しばらく真っ直ぐ進んでいると、うちが見えてきた。
家に着き、チャイムを鳴らす。
ドアがガチャッと開き、お母さん…じゃなく知らない男の子が出てきた。
「誰っっ!?」
思わずわたしは声を上げた。
知らない男の子は、ニヤニヤとしている。
「僕が誰か分からないの?」
男の子に聞かれ、わたしは男の子をまじまじと見つめる。
薄緑のおかっぱの髪の毛に、前髪は丸い。服は緑の直線の模様がかかれている着物を着ている。目はタレ目に、口はおめが。
いくら思い出そうとしても、分からなかった。
「分からないです……」
ついに諦めて言うと、男の子は楽しそうに笑った。
「本当?とりあえず、家に入ってきてよ。」
わたしは男の子に続いて中に入り、そのまま洗面所に行った。
顔と手を洗ってタオルで拭き、洗面所を出た。
洗面所の外で男の子が待ってくれていた。わたしは男の子に着いていった。
男の子が入ったのは、わたしの部屋だった。
部屋に入ると、男の子が聞いてきた。
「なにかいつもと違わない?」
わたしは部屋を見渡してみた。隅々までよーく見てみた。
分からない、と言おうとした時、カメ太郎の水槽に目がいった。
カメ太郎がいなかった。
「カメ太郎がいない!」
わたしは大きい声で言った。
男の子が嬉しそうに笑う。
「せーいかい。」
「いや、そんなこと言ってる場合じゃないわよ!」
ついわたしは怒鳴ってしまった。男の子は驚いていた。
わたしは水槽に近よった。
「きっと、どこか隠れてるのよ。」
なんとか平然を保とうとしたけど、無理だった。
水槽の隅々まで見てみたけど、いない。
自然とわたしの目に涙が溢れてきた。
「どこに行っちゃったの?わたしの愛するカメ太郎…」
次から次に涙が出てくる。
「落ち着いてよ。」
男の子の声が聞こえたが、構わずに泣きつづけた。
「…信じてもらえないかもだけどさ、聞いてくれる?」
あまりにも冷静な男の子の声に、わたしの涙が止まった。
男の子が水槽を指さす。そして、今度は自分を指さした。
「僕がカメ太郎なんだ。」
「は?」
思わずわたしはそう言ってしまった。
最初は冗談だと思ったが、だんだんと本当のことだと思った。
水槽にいないカメ太郎。よく男の子を見ると、たしかに男の子はカメ太郎に似ていた。
現実的じゃないけど、信じないほかなかった。
「カメ太郎なの…?」
わたしの声はひどくかすれて小さかった。
だけどカメ太郎には聞こえたみたいで、頷いていた。
途端に、わたしはカメ太郎に抱きついた。
「う…カメ太郎…よかった…」
わたしは小さい子みたいに泣きじゃくった。
カメ太郎がいなくなったわけじゃなかった。それだけでよかった。人間になったことなんて気にしなかった。けど、しばらくして今のカメ太郎が人間の男の子だと気づくと、急に恥ずかしくなった。
カメ太郎は嬉しそうに微笑んでいた。
「そんなに僕のことが好きなの?」
わたしの顔がカッと熱くなった。が、気にせず答えた。
「うん。誰よりもね。」
今度はカメ太郎がわたしに抱きついてきた。
「僕もだよ。ずっと一緒にいようね。」
そう言うカメ太郎の声は甘くて、優しかった。
カメ太郎がわたしから離れると、そっと言った。
「実はね、僕、人間になりたいって思ってたんだ。」
「へ?なんで?」
カメ太郎がニヤリとした。
「だって、僕が君を抱くことができないからね。」
予想外の答えに、わたしは大いにドキドキしてしまった。
なに動揺してるの、わたし。相手はカメ太郎よ?
「そういえば、色々だいじょうぶなの?人間になって。」
落ち着いたわたしが聞くと、カメ太郎はキョトンとしていた。
「なにが?」
「ほら、食事とか生活とか。一気に変わるわけじゃん。それとも、カメの頃と一緒なの?」
カメ太郎はしばらく黙ってしまった。きっと考えているのだろう。
ようやくカメ太郎が口を開いた。
「そうだね、きっと人間仕様になるんじゃない?だから、きっと明希ちゃんと同じってこと。」
やっぱりそうなのか、とわたしは思った。
その時、ドアがガチャッと開いた。
あれ、お母さん?まずいのでは?知らない男の子いるわけだし…
でも間に合わず、お母さんにカメ太郎を見られてしまった。
お母さんは驚いているようだった。まあ無理もない。
「誰、その子?」
お母さんに聞かれ、わたしはなんと答えようか迷っていると、カメ太郎が
「カメ太郎です。」
とあっさり答えたので、お母さんだけじゃなくわたしも驚いた。
「え、なに言ってるのよ。だって、カメ太郎カメで…」
信じられないという顔でお母さんが言う。
カメ太郎がお母さんに水槽を指さした。
「あそこ、見てください。」
水槽を見たお母さんの目が、見開かれる。これも無理ない。
「え?カメ太郎がいない…」
お母さんは唖然として言った。
「そうです。僕はここにいるんですから。」
平然とカメ太郎が言った。
お母さんは混乱しているようだった。
「はあ?カメが人になるなんてことあるの?あ、分かったわ、これ夢ね?」
カメ太郎がむっとして言った。
「夢じゃないです!現実です!」
「いや、でも、そんな…」
お母さんがなにか言おうとしていたが、カメ太郎ににらまれて黙っていた。
「とにかく、ごはんよ。」
それだけ言うと、お母さんは部屋を出ていった。
「やった、ごはんだって!初めて食べるなあ。」
カメ太郎が嬉しそうに言った。
わたしとカメ太郎が部屋を出てリビングへ行くと、お父さんがいた。
あ、これは、また説明しなくちゃならないやつ……
と思っていると、予想通り驚いているお父さんに、カメ太郎が説明していた。
お父さんを説得するのは、そんなに時間がからなかった。
お母さんと違って夢を見ているタイプだから、カメが人になるということも受けいれてくれた。
お母さんはまだカメ太郎を信じられないという目つきで見ていた。
いただきますをして、夕飯のカレーを食べた。
ドキドキしながらカメ太郎を見ると、きちんとスプーンでカレーを食べていた。
すごいなあと感心して見ていると、カメ太郎がわたしにスプーンを指しだしてきた。
わたしがキョトンとしていると、カメ太郎がニヤッと笑った。
「ほら、僕のカレー、食べさせてあげるよ。」
わたしの頬が熱くなった。
だけど食べてみたかったので、照れつつもカメ太郎に食べさせてもらった。
ぱくっと食べると、味が違っておいしかった。
カメ太郎は楽しそうに笑っていた。
ごはんがおわり、わたしとカメ太郎は部屋に戻った。
寝るまでカメ太郎とテレビを見ていた。
初めて見るテレビに、カメ太郎は大喜び、大興奮だった。
あっという間に寝る時間になり、カメ太郎もわたしの布団で寝た。
急に男の子と同じ布団で寝てるんだと思うと、顔が赤くなってきた。
いや、あれはカメ太郎だ、カメ太郎だ……
と思うようにして、わたしは気持ちを落ち着けた。
ドキドキの人間のカメ太郎との生活のスタートです!
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