ソレが出て来る話を聞かないでください
追い掛けて来るソレから逃げる必要があるからです。
【見える】だけの私と【追い掛けられる】絵里。

その差がなんなのか、私にもわかりません。
ソレが出現するタイミングも消えるタイミングも同じ。

そして見えているソレ自体も同じなのに、行動だけ違うなんて。
最初は信じられませんでしたけれど、自分でも【見える】ようになったため、絵里の言葉に疑いを持たなくなっていました。

とにかくこうしている間にも時間は刻一刻と過ぎて行きます。

私の門限は午後5時なので、部活動が終る頃には帰宅していなければいけないのです。

少し遅れるくらいはどうってことないけれど、遅れた理由を聞かれると返答に困ることがわかっているので、できるだけ門限までには帰宅しておきたいのです。

私はゴクリと唾を飲み込んで『わかった』と、頷きました。

絵里は私の手を握りしめて教卓の下から這い出ました。

私も同じように教卓の下から出て、ドアの前に立ちました。
お互いに手を強く握り合ったまま思い切ってドアを開きます。
廊下の左右に視線を走らせても、ソレの姿はありません。

ホッと胸をなで下ろした次の瞬間でした。
背後に流れている空気が急に冷たくなったんです。

ゾォォォォォーと背筋を駆け上がる冷気に振り向くと、今まで私たちが隠れていた教卓の前にソレが立っていました。
私たちは声にならない悲鳴をあげて一気に駆け出しました。
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