あなたが運命の番ですか？
　始業式のために体育館への移動中、よくアタシに声を掛けてくれるベータクラスの女子４人組が駆け寄ってきた。
「星宮さん、大丈夫？」
「私たち、記事のこと全然気にしてないからね」
　女子たちはアタシのことを慰めてくれた。
「あははっ、ありがとう。アタシは大丈夫だよ」
　アタシはぎこちなく笑って返した。

「星宮さん、橘先輩に騙されちゃダメだよ！」
「――えっ？」
　アタシは１人の女子の言葉に、思わず絶句した。
　
「あの人、いろんなお金持ちのアルファに色目使って、お金を貰ったりしてるらしいよ」
「去年、そのことが問題になって、橘先輩にお金を渡してたアルファが何人か停学になったんだって。でも、橘先輩自身は何のお咎めもなしだったらしくて……。先生たちのことも籠絡(ろうらく)してるんじゃない？」
「確かに。オメガって色仕掛けとか美人局とか得意って言うしね」
「きっと星宮さんのことも、有名人でお金持ってるから取り入ろうとしてるんだって」
　
　アタシは彼女たちの言葉に困惑した。
　なんで、橘先輩が非難されてるんだ？

「悪いのは星宮さんじゃなくて、全部橘せ――」
「違うよ！！！」
　アタシは思わず声を荒げてしまった。
　すると、女子たちは目を丸くさせてアタシを見つめる。
　アタシはすぐに我に返って、「ご、ごめん……」と謝った。
　
「橘先輩とは、そんなんじゃないよ……。お金なんか渡したことないし……。アタシのことは心配しなくて大丈夫だから」
　アタシはそれだけ言い残して、足早に彼女たちの元から去った。
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