あなたが運命の番ですか?

我慢の限界

 その日の夜、私は夕飯を食べながら、橘先輩の言葉を反芻していた。

 ――僕と星宮さんは、住む世界が違うんだ。僕なんかと一緒に居たら、星宮さんまで白い目で見られちゃう。
 ――君は幸せになれるはずだよ。

 終始、どこか諦めたような表情を浮かべていた橘先輩。

 ――橘くんってね、自分から不幸になりにいこうとするところがあるんだよね。自分は幸せになれるわけがないって、本気で思ってるんじゃないかな?

 確かに、東部長の言う通りだと思う。
「君は幸せになれるはずだよ」の言葉の中には、「僕は幸せになれるわけがない」という意味も含まれていたのだろう。
 初めて出来た友達に恋心を抱いて、そんな自分に失望して自暴自棄になって――。そんな自分が幸せになれるはずがない、と橘先輩は思い込んでいるようだ。
 そんなことはない。私はそう言いたかったが、私がどんな慰めの言葉をかけたとしても、橘先輩の心には届かないような気がした。

 星宮さんが何とも思っていない相手と肉体関係を持つ人だとは、到底思えない。
 きっと2人は相思相愛だと思う。だけど、橘先輩は身を引こうとしている。
 どうすればいいのだろうか。どうすれば、2人は――、橘先輩は幸せになれるのだろうか。
 私から星宮さんに何か声を掛けようか。でも、星宮さんに連絡をして、そのことがお母さんにバレたら、それこそ星宮さんに迷惑が掛かってしまう。
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