あなたが運命の番ですか?
週明けの昼休み、アタシたちは以前のように、裏庭に集まった。
久しぶりに会ったら、ぎこちなくなるかと心配していたが、案外スムーズに会話が弾んだ。
今まで会えなかった期間を埋めるかのように、アタシたちは色んな話をした。
「春川さん、期末テスト全教科赤点回避できたらしいよ」
「えっ!?本当に!!?すごいじゃん!!良かったねぇ」
「ふふっ、鏑木さんに勉強を教えてもらったおかげだよ。それに、星宮さんも……」
「えぇっ!?アタシは何もしてないよ」
「ううん。だって、勉強会を提案してくれたのは星宮さんだもん。星宮さんのおかげでもあるよ。ありがとう」
屈託のない笑みを浮かべる春川さんにつられて、アタシも笑みが零れた。
2人と話していると、どんどん心が軽くなっていき、気持ちも明るくなっていく。
アタシは自分が思っていた以上に、孤独を感じていたようだ。
「星宮さん。もしも、何か困っていることがあったら、何でも相談してね。私も、星宮さんの力になりたいの」
春川さんはそう言いながら、穏やかな表情を浮かべる。
アタシは「橘先輩のことを言っているんだろうな」と察した。
2人はあの件について直接触れようとはしないが、アタシのことを心配しているようなそぶりは見せる。
アタシは素直に「ありがとうね」と返した。
――星宮さんが橘くんと番にならないなら、俺が橘くんを番にしようかな?
不意に、前園先輩の言葉を思い出した。
「……あのさ、朱音ちゃん。少しの間だけ、耳塞いでてくれない?」
「は?なんで?」
朱音ちゃんは怪訝な顔をする。
「お願い。春川さんに聞きたいことがあるの。結構デリケートな話だから、朱音ちゃんには聞いてほしくないけど、春川さんと2人きりになるのはダメだから、耳塞いでて」
「ハァ……。あんまり変な質問して、春川さんを困らせないでよ」
朱音ちゃんは悪態をつきながら、両耳を塞いだ。
アタシと春川さんは、朱音ちゃんを挟んでベンチに横並びで座っていたが、春川さんに耳打ちするため、アタシは立ち上がって春川さんの傍に歩み寄る。そして、アタシは春川さんの耳元に口を寄せる。
「……あ、あのさぁ、春川さん。前園先輩に橘先輩のこと、聞いてる?」
念のためにボカした表現で、アタシは質問した。
すると、春川さんはキョトンとした表情で、アタシを見つめてくる。春川さんのその表情を見て、アタシは「あれ?」と思った。
春川さん、もしかして前園先輩が橘先輩のことも番にするつもりだって知らないのか?それとも、アタシの質問の意図が伝わっていないだけ?
アタシが狼狽えていると、春川さんは遅れてハッとしたような顔をする。
「前園先輩が橘先輩のことも番にするって話?もちろん、聞いてるよ」
春川さんは慌てた様子で、早口になりながら返す。
「そ、そうなんだ……。こんなことを聞くのは失礼かもしれないけど、春川さんは平気なの?その、前園先輩に、他の番ができるの」
アタシの質問に、春川さんは困ったような顔をして、「うーん」と考え込む。
「ちょっと複雑だけど、橘先輩なら良いかなって思う。私も橘先輩のことは心配で、放っておけないし……。それに、私は前園先輩のことを信じてるから……。私のことも、橘先輩のことも大切にしてくれるって、そう思ってる」
春川さんは一切淀みのない目で、真っ直ぐアタシを見つめながら答えた。
そんな春川さんの表情に、アタシは圧倒されて言葉を失う。
信じてる……。婚約者の春川さんにこんなことを言わせる前園先輩は、やっぱりすごいな。
「星宮さんは、前園先輩と橘先輩が番になるの、嫌?」
前園先輩と橘先輩が番になる。
橘先輩が、アタシ以外のアルファのものになる――。
「……嫌、かもしれない」
久しぶりに会ったら、ぎこちなくなるかと心配していたが、案外スムーズに会話が弾んだ。
今まで会えなかった期間を埋めるかのように、アタシたちは色んな話をした。
「春川さん、期末テスト全教科赤点回避できたらしいよ」
「えっ!?本当に!!?すごいじゃん!!良かったねぇ」
「ふふっ、鏑木さんに勉強を教えてもらったおかげだよ。それに、星宮さんも……」
「えぇっ!?アタシは何もしてないよ」
「ううん。だって、勉強会を提案してくれたのは星宮さんだもん。星宮さんのおかげでもあるよ。ありがとう」
屈託のない笑みを浮かべる春川さんにつられて、アタシも笑みが零れた。
2人と話していると、どんどん心が軽くなっていき、気持ちも明るくなっていく。
アタシは自分が思っていた以上に、孤独を感じていたようだ。
「星宮さん。もしも、何か困っていることがあったら、何でも相談してね。私も、星宮さんの力になりたいの」
春川さんはそう言いながら、穏やかな表情を浮かべる。
アタシは「橘先輩のことを言っているんだろうな」と察した。
2人はあの件について直接触れようとはしないが、アタシのことを心配しているようなそぶりは見せる。
アタシは素直に「ありがとうね」と返した。
――星宮さんが橘くんと番にならないなら、俺が橘くんを番にしようかな?
不意に、前園先輩の言葉を思い出した。
「……あのさ、朱音ちゃん。少しの間だけ、耳塞いでてくれない?」
「は?なんで?」
朱音ちゃんは怪訝な顔をする。
「お願い。春川さんに聞きたいことがあるの。結構デリケートな話だから、朱音ちゃんには聞いてほしくないけど、春川さんと2人きりになるのはダメだから、耳塞いでて」
「ハァ……。あんまり変な質問して、春川さんを困らせないでよ」
朱音ちゃんは悪態をつきながら、両耳を塞いだ。
アタシと春川さんは、朱音ちゃんを挟んでベンチに横並びで座っていたが、春川さんに耳打ちするため、アタシは立ち上がって春川さんの傍に歩み寄る。そして、アタシは春川さんの耳元に口を寄せる。
「……あ、あのさぁ、春川さん。前園先輩に橘先輩のこと、聞いてる?」
念のためにボカした表現で、アタシは質問した。
すると、春川さんはキョトンとした表情で、アタシを見つめてくる。春川さんのその表情を見て、アタシは「あれ?」と思った。
春川さん、もしかして前園先輩が橘先輩のことも番にするつもりだって知らないのか?それとも、アタシの質問の意図が伝わっていないだけ?
アタシが狼狽えていると、春川さんは遅れてハッとしたような顔をする。
「前園先輩が橘先輩のことも番にするって話?もちろん、聞いてるよ」
春川さんは慌てた様子で、早口になりながら返す。
「そ、そうなんだ……。こんなことを聞くのは失礼かもしれないけど、春川さんは平気なの?その、前園先輩に、他の番ができるの」
アタシの質問に、春川さんは困ったような顔をして、「うーん」と考え込む。
「ちょっと複雑だけど、橘先輩なら良いかなって思う。私も橘先輩のことは心配で、放っておけないし……。それに、私は前園先輩のことを信じてるから……。私のことも、橘先輩のことも大切にしてくれるって、そう思ってる」
春川さんは一切淀みのない目で、真っ直ぐアタシを見つめながら答えた。
そんな春川さんの表情に、アタシは圧倒されて言葉を失う。
信じてる……。婚約者の春川さんにこんなことを言わせる前園先輩は、やっぱりすごいな。
「星宮さんは、前園先輩と橘先輩が番になるの、嫌?」
前園先輩と橘先輩が番になる。
橘先輩が、アタシ以外のアルファのものになる――。
「……嫌、かもしれない」